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消しゴム。
【サイコ その他小説】

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消しゴム。-2

 このメーカーの消しゴムは消えない。
 だけどこれ前のメーカーの消しゴムも、これ前の前のメーカーの消しゴムでだって、あたしは消えなかった。
 なんで?
 どうして?
 そっか、この消しゴムが悪いんだ。
 でも消えませんでした、っていっても使用済みの消しゴムは返品出来ないってママが言ってた。
 消えない消しゴムは要らないよ。
 消しゴムのくせに消せないんだもん。
 そんな消しゴムに使い道無いじゃん?
 そんなの消しゴムだなんて言わない。
 そんなのにこの世に存在する理由だって、これっぽっちもないよ。
 イラナイよ。
 だからね、あたしね、罰として、食べちゃう事にしたんだ。消しゴム。
 ずーとずっと前、お姉ちゃんがね、

「あんまりミカンばっか食べてると、あんたミカンになっちゃうよ」

 って言ってた。
 そしたら本当に手の平が黄色になってきたんだよ。あたしは怖くなってきて、それっきりミカンはもう絶対食べない事にしてる。
 つまりね。
 だからね。
 うん、そういう事。
 あたしが消しゴムを食べるとね、いつか手の平から白くなっていってあたしは消しゴムになれちゃうんだよ。
 味はなんとも言えないなぁ。
 最初はゴム噛んでるみたいだった。修正液クサいゴム。メーカーによっては、固めのコンニャクみたいなのもあったなぁ。ぐにぐにしててね、厚かましくあたしの歯を押し返して抵抗してくんの。まぁ、奥歯で粉々に噛み砕いてオレンジジュースで飲み干してやったけどね。ザマーミロ。
 匂い付きの奴は最悪だった。消えない上に酷い香りで口の中から鼻に逆流してくるし、飲み込んだ後も暫くあのプラスチックの香り玉をごちゃまぜしたようなフザケた後味が消化器官に染み込んであたしの細胞を犯してくる、あの酷い後味には今も吐き気を覚える。
 今日の消しゴムはコリコリしてる。鳥軟骨の唐揚げみたいだなぁ。最近、ママの消しゴム選ぶセンスがずっと良くなった気がする。後で褒めてあげなきゃ。
 あたしは消しゴムになったらね、どうしてもしてやりたい事がある。
 別に、そんなにたいした事でもないんだけどね。
 あたしの身体をカッターで切って、斜め後ろの席に座ってる、ムカつくあいつにぶつけてやるんだ。


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