光を走る性。-4
情けで得た命に何の意味がある?
おれはあなたを尊敬しているんだ。
だから…
と目が悲しく訴えている。
同じ境遇のライアンにはそれがわかった。
無駄は自尊心を捨てることをこの若い戦士は激しく拒んでいる。
ライアンは散漫した気持ちを一点に集めた。
踏み込み鮮やかに鋭く迫った。
刃零れした刃を凪ぐ。
風を斬り若い戦士の首筋をそれはとうとう捉えてしまった。
噴水のように血飛沫が舞う。
崩れ落ちる視界の中の男。
鈍い音をたてて崩れ落ちた。
血と汗と悔恨で彼はクラクラした。
命をたくさん奪ってきた。
一つ奪うごとに彼は重力が増すのを肌で感じた。
紛れもなく生かされているのだと。
今までの情景がフラッシュバックしていく。
何の為に闘い続けて
命を奪い続けたのか。
光の為。
自分の欲望の為。
本能に従っただけ。
それが生きるということ。
涙を流した。
鉄仮面にそれは吸い込まれて消えた。
欲しかった光ももうどうでもよくなった。
ただ眠りたい。
彼は闘技場を跡にした。
黒く重い体をひきずりながら。
生の価値を確かめながら。
光を求めて。