光を走る性。-3
剣を握りしめ円型の闘技場の入り口で始まりの合図を待った。
光を獲るために。
ドラが低い音で唸り声をあげ、開始を告げた。
鉄仮面の位置を正し、相手を激しく睨み付けた。
その相手は
スケールだった。
この日が来ることを彼は恐れていた。
襲い掛かるスケール。
彼は迷った。
この若者の命を奪わなくてはならない運命を憎んだ。
迷いが過る。
スケールは低い唸りをあげ刃を振りかざした。
彼も彼自身の求めるモノのため理性を捨て去ろうとしているのだろう。
ぶつかり合う白刃。
火花が散る。
地面と水平にし刃で喉元を狙い付ける。
吐き気が込み上げる。
それを飲み込み、激しく踏み込んだ。
スケールはそれを盾で食い止め、振りかぶる。
そこにあのあどけなさはもうなかった。
刃がライアンの腕を掠めた。
血潮舞う。
痛みを堪えて体勢を立て直した。
彼の死の上にある我が生にどれだけの価値があるだろう?
どうせいつかは朽ち果てる命。
天命を全うする時おれはどう思うだろうか?
犠牲者の叫びが聞こえるだろうか?
意味があるだろうか。
頭上の太陽が眩しかった。
二つ命を照らしていた。
何かに生かされているこの命の熱が汗となって流れ落ちた。
彼の中で葛藤が戦っている。
相手を壊す以外に生き残る道はない。
ここでおれが死んだらどうなる?
誰一人悲しまないだろう。
皆の記憶からも消え去るだろう。
砂のようにハラハラと。
彼は自らの命を彼のこれからに譲る決意を固め始めた。
しかし…
当の彼の瞳を見ると、
何かを訴えている。
命のぶつけ合いを本気でしようじゃないかと言っているようだった。