光を走る性。-2
存在意義。
ライアンはそれを疑わなかった。
鋼のような揺るがない信念を持っていた。
行きたい。
自由がほしい。
渇望した。
この闘技場から出る事が彼にとっての唯一の光だった。
ある朝ライアンは出会った。
まだ自分よりもふた廻りも若い少年のような瞳をもつ男に。
彼の名はスケール。
「ラッシュスケール」
と異名を持つ彼も戦士だった。
普段から人との関わりを避けていたライアンはスケールを睨み付けた。
動物的本能で威嚇した。
おれに近づいてくるなとメッセージを込めて。
スケールは目を真ん丸くして愛敬のある笑顔を見せた。
「こんにちは。ライアンさん。
前からあなたとお話がしたかったんです。」
暖簾に腕押し。
スケールはその威嚇をスルッと躱して近づいてきた。
「なんのようだ?」
不機嫌にライアンは放つ。
「僕はあなたのような勇敢な戦士になりたい。
あなたに憧れていました。」
屈託のないスケールの会話に吸い込まれそうだった。
その吸引力を断ち切るようにライアンは続けて放った。
「おまえに伝えることは何もない。
…一つだけあるとしたら、おれらは言葉じゃ意志疎通できない不器用な人間だということだ。」
それ以上の会話を断ち切った。
確かに戦士たちは馴れ合いを好まない。
いつその相手が自分と刃を交えるかわからない。
そしてその命さえ奪わなくてはならないから。
軽くぺこりと頭を下げスケールは立ち去った。
おれにも息子がいたらあの位だろう…。
どこかでライアンもスケールに親しみを感じていた。
それはあの愛くるしい表情か、屈託のない笑顔のせいか。
くる日もくる日もスケールは懲りずにライアンの前に姿を現した。
他愛もない会話をするために。
いつしかライアンも心を開いてしまった。
愚かな行為と知りつつも、スケールがやってくるのがうれしくなり、毎朝のその時間を心待ちとしていた。
自分にはないものを持っていたからか。
つかの間の安らぎはすぐに失われた。
闘いの時間。
ショータイム。