二人でお買い物-2
小夏の運転する青い軽自動車は、目的地へと向かって道路を進んでいる。
「あ、そういえばサイン色紙渡した時にお義母さんどんな反応してた?」
小夏がハンドルを両手で掴みながら尋ねる。
「上機嫌でしたよ。あんなに喜んでいるの久々でした」
「良かった。まさかと思って渡しておいたけど、功を奏したわね」
「あれって幾らくらいなんです?」
「そうね。ネットで落札するなら‥‥最低でも20万くらいかな」
金額を訊いて、遥太は思わず吹き出しそうになった。。
「えっ!?あれ、そんなにするんですか!?割とぞんざいに持って帰ったんですけど‥‥!」
「‥‥確か、何かのテレビ番組での視聴者プレゼントの企画だったのよね。それでハガキを10枚くらい書いて、別々の場所のポストに投函して応募したの」
小夏は当時を思い出しながら懐かしむように言う。
「そんな高価な物を頂いちゃって本当にいいんですか?」
「うん。今でも好きな俳優だけど、サイン色紙はもういいかなって」
言いながら、小夏はハンドルを回して道路を右に曲がる。
「お義母さんファンなんでしょ?喜んでくれるならそれでいいわ」
「ありがとうございます」
お礼を言いながら遥太はプレゼントを考えるのだが、その金額に見合うだけの物が自分に贈れるのか、ということに気づく。
正確には自分へのプレゼントではないが、高価な物を貰ったのは事実である以上何かお返しは当然ではないかと。
そんなことを思って遥太は「うーん‥‥」と唸っていると、
「あ、お返しは気にしなくていいよ。私が勝手にあげたものだから」
「でも、貰ったものですし。何かお返しはしたいです」
「‥‥そう?じゃあ――キミの体で払って貰おうかな」
「うぇっ!?」
遥太は小夏の発言に思わず間抜けな声を上げて横を見ると、彼女の方は口元を綻ばせて楽しそうであった。
車内の雰囲気は楽しげに、小夏の運転する青い軽自動車は目的地を目指して道路を突き進んで行く。