小夏、自身の想いに気づく-3
「ぷはっ‥‥も、もう‥‥小夏さんったら‥‥」
遥太は困ったような様子で小夏を見やる。
「ドキドキした?泊まりたくなった?それとも‥‥またエッチしたくなっちゃった?」
矢継ぎ早に質問攻めして、遥太の返答を待つ小夏。
「そ、そりゃ全部当たってます‥‥けど、僕は家に帰らないといけないんです!明日には学校だってあるし‥‥!」
恥ずかしそうに本心を告げる遥太を見て、小夏は勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
「それじゃあ仕方ないわね。今日泊まらないなら、次に逢う日決めないと、ね?」
「えっと‥‥じゃあ明後日――」
「えっ?私、明後日までキミに逢えないの?」
冗談よね?と、小夏は顔を近づけて凄むと遥太は冷や汗をかきながら、
「え、えっと‥‥じゃあ明日‥‥」
「うん賛成。どうせなら学校帰りに出掛けましょう。一緒に歩いてお買い物したいな」
「は、はい。お買い物、しましょう‥‥」
遥太は小夏の勢いに負ける形で了承することになった。しかし、その顔は満更でもなく嫌悪感は微塵も感じさせない。
近頃はこうやって小夏の方が遥太を振り回していた。そこは年上の威厳としてか、リードする立場としての自覚が彼女にはある。
一方でセックスの際は主導権はその時によってまちまちだった。結局はその時の気分一つで変わるのである。
「待ち合わせはどうする?確か、遥太くんの通う学校って原之坂高校よね」
「はい、そうです」
「なら、私が放課後に車で学校近くまで迎えに行く?」
「良いんですか?じゃあ、お願いします」
遥太に頼られて小夏は早速晴れ晴れとした気分になった‥‥が、すぐにこの幸せをぶち壊す存在も彼と同じ学校に居ることに気づくと、
「あ、そうだ。予め言っておくけど、手白木颯人は私の車には今後も乗せる予定は皆無だから遥太くんが"一人で"私の所に来るのよ」
小夏は邪魔が入らないように先手を打って「一人で」を強調した。
「わ、分かりました‥‥」
遥太は苦笑しながら了承すると、ベッドから降りて床に散らばっている下着類を先に拾い上げては着替え始める。先に靴下、次にトランクスと履く。
「ついでに私の下着も拾ってくれない?」
「そ、それは自分で拾ったら良いんじゃないですか‥‥」
と、口ではそんなことを言いながら遥太は自分の衣服類を拾い上げる途中で紫色の下着一式を凝視していたことを小夏は見知っていた。
「(今度、私の使用済み下着セットでも宅配で送ろうかな?)」
密かに悪戯心が小夏の胸の内で芽生える。
小夏がそんなことを考えている間に、遥太はいつもの制服姿に戻った。
「!あ、待って遥太くん」
小夏は送るものから遥太へ渡す物があったのを思い出すと、ベッドから裸のまま立ち上がり、部屋のドレッサーの所に無造作に置いてあった星柄の包み紙につつまれた四角形の品物を手渡した。
「え、これって‥‥?」
「私はもう要らないから、お義母様にあげてね」
サラッと小夏はセフレの母親を、義理の母のように呼んでから贈り物を手渡す。
「は、はい。ありがとうございます‥‥」
遥太は受け取ると素直にお礼を言った。が、その視線は小夏の顔ではなく、立派な乳房の方に釘付けだ。
小夏は男子高校生の視線に気づくと、悪戯心から自身の胸を掴んで寄せる。
「うぇっ!?」
見ていたHカップのバストを魅せつけられて遥太は、間抜けな声を上げる。
「あぁんっ‥‥私のこのおっぱいまた遥太くんに揉んで貰いたいなぁ。駄目かな?」
乳房を自身で揉みしだきながら頼み込む小夏。
「こ、小夏さん‥‥!」
遥太は人妻からの誘惑にたじろぐ。
「ねぇ遥太くん‥‥私のおっぱいを好きに揉んでいいのよ?ほーら‥‥」
「ッ!?」
遥太は小夏からの誘惑に負けて乳房に一瞬、手を伸ばしかけた。が、それに触れるよりも早く首を横に振ると、
「で、でも‥‥僕は帰らないといけないので‥‥!さ、さよなら!」
その場で脱兎の如く駆け出し、部屋を飛び出して行った。
小夏は一連の行動に一切動じることなく、口の前で両手を合わせて三角形を作ると、
「続きはまた明日ねー」
届いているか分からない、お見送りの言葉で見送るのだった。