小夏、自身の想いに気づく-2
「ど、どうでした‥‥?」
遥太は横に並んで座った小夏にセックスの感想を尋ねる。さながら教師にテストの点を聞いている時のようだ。
小夏は微笑ましく思いながら口を開く。
「良かったけど、生の方がもっと気持ち良くなれたと思う」
主に私が。小夏は続けてそう告げる。
「いや、だって小夏さん自分の膣内に出すと怒るじゃないですか」
いつぞやのことを思い出して、それを指摘する遥太。
確かにそれは事実であるが、指摘された当人はどうも釈然としなかった。
「それはそうだけど‥‥。もっとこう、何というか男として物足りないなって思わないの?」
「うーん‥‥僕は小夏さんと一緒に居てセックス出来る時点で十分過ぎるくらいに満足してますよ」
小夏の問い掛けに、遥太は少し考えてからはっきりと答える。
遥太が言っているのは恐らくは本心だろう。彼は満ち足りているから嘘偽りなく、堂々と言えるのだ。
小夏はそう言われて本来嬉しい筈だった。なのに、少しだけ物足りなさも感じてしまう。
それが、奇妙な苛立ちを生み出して自然と表情をしかめっ面にさせた。
「‥‥‥‥」
「こ、小夏さん?もしかして‥‥怒ってます?」
急に黙り込んでムッとしている小夏に、遥太は心配そうに声を掛けた。
「怒ってない。遥太くんには全然怒ってないから」
小夏は遥太ではなく、自分自身が苛立ちの理由が分からないことに対して怒っていた。
当然、遥太はそんな彼女の胸中は知らない。困ったように小夏を眺めて観察していると、何かに気づく。
「あ、でも‥‥小夏さんって怒っていても美人さんですよね。見惚れちゃいます」
「ッ!?」
遥太の言葉を聞いて、自分の鼓動が高鳴るのを小夏は感じた。同時に嬉しさから自分の口角が吊り上がりそうになっていることを。
小夏はそれを誤魔化そうと、咳払いをしてから話題を変えた。
「コホン、今日も泊まって‥‥いや、今日は家に泊まっていかないの?」
言葉にした後で、まるで泊まっていくことが最初から前提な言い方なことに気づき、言い直してから尋ねる小夏。
遥太はうーん、と両手を組んで考えてから口を開く。
「さすがに一昨日泊まって、今日も泊まるのはどうかと思います。先週だけでも4回も泊まってますから、ウチの親とか何か疑うかも知れないです」
「残念ね。一緒に過ごそうと思ったのに」
「また来ますよ。今の僕は小夏さんのセフレなんですから、いつだって――」
セフレ。そう言われて小夏は一瞬、心に痛みが走った。元々は自分で言い始めたことである筈なのに。
小夏はまだ話している遥太の会話をぶった切るように、遥太に向き合って手を首の後ろに回した。
「こ、小夏さん?」
「ちょっと待って」
おもむろにそう告げると、小夏は迷わず遥太の唇を奪った。
「むちゅっ‥‥ちゅっ、ちゅっ‥‥ちゅるる‥‥」
まるで自分の物であることを主張するように、自分の唇で何度も何度もマーキングする。
漸く解放してくれたのは3分程経ってからだった。