病室の ママ-1
縁とリリーのドアが いや店先がえぐれた様に無くなり
店内の何も無い棚を街灯が照らし出していた
立ち上がり店内をのぞき込むが 床に転がるコンクリートとガラスの破片
木製のドアの破片も散らばっている
和夫は隣の焼き鳥屋を訊ね 店長が出て来て答えて呉れた
「何が有ったんです?」 和夫が訊ね
「2週間前に 老人がブレーキとアクセルを間違って お店に飛び込んで」
店主が答え
「ここのママは? 大丈夫だったのですか?」
重ねて和夫が聞くと
「ママは飛び込んだ車の下敷きになって ○○病院に入院しているよ」
店主が答えた
和夫は礼を言い スマホで病院を検索すると
駅前の花屋で花束を作って貰い病院へと向かった
面会時間を見ると ギリギリの時間に成って居て 受け付けで尋ねた時
看護婦が少し迷惑そうな顔をして
帰宅の時間を念押しされてしまった 照明を幾つか落とした廊下を歩き
ママの部屋を見つけ ノックをして
病室へと入って行った 4つのベッドが配置され
窓際のベッドにママの姿を見て 花束を抱え歩みより
和夫はママの姿に驚いてしまった 真っ黒な髪は白く成り
艶やかな顔は 皺に覆われ まるで老婆が
寝ているかの様に見え 和夫は黙ってママの寝姿を見つめていた
ママが目を開け 和夫を見て微笑んでくる
「・イ・イ・ダ・サ・ン・・マ・ッテ・イ・タ・ワ・・・・
・・・マ・ニ・ア・ワ・ナ・イ・カ・ト・・・・」
ママは起き上がり 猫の目の様に光っていた目は
光を失い 汚れたガラス玉の様な目を向けて来た
「夢の世界を旅してきたのね どうだった?」
「夢の世界は?貴方が作り出した世界よ」
目に光が戻り始め 輝いて来る
「浮世に戻りたくなったの?」
「夢の世界で女性達に囲まれてた方が良かったのでは?」
妖艶な笑顔を見せ聞いて来た
「女性達と約束して来てね 果たさないと」
和夫は 陽菜や咲良たちを思い浮かべママに言った
「そうなの・・・でも・・扉は壊れてしまったわね・・・」
ママは 昔スナックで見せた 肉食の動物の目で
和夫を 嬲る様に見つめ話して来た
「夢からは 覚める事出来ないの?」
和夫は不安に成り ママを見つめ 覚めなければ
警察に 追い回される事を想像していた
「・・ウフ・・ウ・ソ・ヨ・・・」
ママが 手を差し伸べ和夫を見つめて来た
「・テ・ヲ・ニ・ギ・ッテ・ク・レ・ル・・」
和夫は花束を置きママの手を握った・・・・・
・・・頭の中を 白い光が充満し白い霧に和夫は包まれ・・・