愛はふたりぼっち-3
「ファンレターだって便箋じゃなくノート、可愛い写真もプリクラも入っていた。だから、ロケのたびに、すぐ君だと分かった。それにデモテープ。最初は、ただカラオケを吹き込んだもの。それがだんだんオリジナルになったね」
「・・・よく、覚えていますね・・・」
「ふふっ、自分でも分からない・・・でも君のことは、いつも気になっていた。だから『愛は独りぼっち』のデモテープが、最後のファンレターになったのかな?」
「そうです・・・」
「その理由が知りたい」
夜景から目を転じた結城の無言の催促に、つい莉緒奈は胸の閊えを吐き出す。
「結婚されたから・・・」
そして、結城も詰めていた息を吐き出した。
「・・・別れたよ」
「・・・えっ!?」
「1年ももたなかった・・・」
そこで、結城は頭を振る。
「『愛は独りぼっち』、デビュー曲なんだろ?」
「そうです」
「それで、君の気持ちが分かったんだ。それに・・・俺もね」
映画はチャンスだと、旧知の仲である監督と話を付けたらしい。
また、ヒロインは共演の2人の中から結城が選ぶ手筈になっており、莉緒奈に決めたと言う。
「自分の気持ちを確かめたかった」
それが、先程のラブシーンに繋がったのだ。
「いつの間にか君は、俺の心に棲んでいた。だから・・・」
『愛は独りぼっち
貴方に置いてけぼり
闇に隠れんぼ
涙は見せたくない
愛は独りぼっち
貴方を愛していた
闇に甘えんぼ
痛みが和らぐよに』
曲が莉緒奈の中を奏でては込み上げ、涙が溢れた。
「13年かかりました・・・」
《Fin》