『beat mania UDX』より〜不夜城の仲間たち…セリカ-3
「ふぇっ……」
『な、なんで泣くんや!?ワイそんな強う叩いとらんのに……ごめんな?痛かったんか?』
彼の言葉が凄く優しくて、私は人目もはばからず泣いた。
『師匠!』
『識、いいところに来た!ちょっとこの子を!』
「識…さん……うぅ」
『ハ、ハイ!さ、セリカちゃん。こっちに』
私は泣きながら、識さんたちに連れられて従業員の控室に入っていった。
『セリカちゃん、はい、ココア』
「ありがとう……」
暖かいココアを飲むと、さっきまであった恐怖も段々と無くなっていった。
『識、お前店長なんやからもっと客さんに目ぇ光らせんかい』
『す、すいません。でも、師匠が入ってくるのが見えたので大丈夫かなと……』
『なんでもかんでもワイに任せようとするんやない』
『すいません……』
識さんが男の人に謝っているのを見て、私は男の人にお礼を言っていないことに気が付いた。
ココアをぐいっと飲み干して、私は男の人に声をかけた。
「あの……さっきはありがとうございました」
『ん、ええよ別に』
ちょっとぶっきらぼうだったけど、返事をしてもらったことが何よりも嬉しかった。
「あの、お名前なんていうんですか?」
『ワイ?ワイはユーズ。仲間内にはそう呼ばれとる』
「ありがとうございました、ユーズさん」
『あぁ〜、別にタメでええよ。そっちのが楽やし』
「じゃあ……ありがとう、ユーズ」
『おう、どういたしまして』
ユーズはその後用があるといって、識さんと奥に消えていった。
ちょっと目つきが恐いけど、笑いかけてくれた時の顔が私の頭の中から離れなかった。
(カッコイイかも……)
そんなことを考えていると、ユーズが奥から出てきた。
ユーズは何も言わずにドアに手を掛ける。
何か言わないと……。もっと、ユーズのこと知りたい!
私が声をかけようと振り向くと、ユーズは私に話し掛けてくれた。
『迷惑やないなら送ってったるけど……どや?』
私は、一も二もなく頷いていた。