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母×野菜炒め>太陽
【コメディ その他小説】

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母×野菜炒め>太陽-2

 ああ、この優しく心地よい風……。太陽という強大な敵からの凶悪な攻撃を耐え抜いたこの僕を、まるで祝福しているようじゃないか。もう日差しも湿度も関係ない。ここは僕だけの閉鎖的且つ絶対的空間だ。誰だろうとこの聖域を侵すことはできない。

「ねぇ、野菜炒め食べない?」

 と思ったのも束の間、僕の絶対的空間が侵されたのであった。

「母さん、その野菜炒め父さんの車で炒めたやつだよね」

 なんかまるで、車が調理器具かなにかのようなセリフだな。

「作り過ぎちゃったの、てへっ♪」

 と右手の拳で自分の頭を小突く母。自分の母親がぶりっ子になるところは、中々お目にかかれない。できればそのキャラは、墓の中まで持っていって欲しかったが。

「いやいや、車のボンネットって汚いから……」
「大丈夫よ、朝の雨で汚れは落ちたから」
「雨って汚いから」
「もう、そんな細かいこと気にしないの! そんな風に育てた覚えはないぞ♪」

 お前に育てられた覚えはない! ……と言いたいところだが、実際に育てられている以上反論が難しい。
 その時突然、フル稼働中の僕の脳みそに、3つの選択肢が浮かび上がった。


1.喜んで食べる
2.いやいやながらも食べる
3.流し込む



 結局全部食べるしかないやんけ。そんな葛藤の間にも母は期待に満ちた瞳で僕を見つめてくる。先ほどまで父の車のボンネットに乗っかっていた野菜炒めも、僕に迫ってくる。とんでもない重圧だな、これは。

 それなら僕は……男として……3を選ぶ! お母さん、野菜炒めって流し込むものだったんだね(違う)
 僕は母が持つ野菜炒めが山盛りにのっかっている皿をぶんどり、僕愛用のピンクの箸で野菜炒めを口の中に流し込んだ。
 その瞬間、僕は喉に、そして舌になんとも形容しがたい衝撃が走った。思わず寝不足気味な充血した瞳をカッと見開く。

 これは、な、生! 今日の日差しでは、野菜に火を通すには不十分だったということか! ……そしてなにより味が濃ゆい。醤油かけすぎだよ、マイマザー。

 沸々と沸いてくる吐き気を押さえながら、僕は順調に箸を進めていった――というか、いかざるを得なかった。だって箸止めたら吹き出すって、これ……。


――。

 たった数分の短いフードファイト。しかし僕にとっては果てしなく長い戦いがようやく終わった。というか、つまり食べきった。

「うぷ、た、食べたぞ」
「ご馳走様は?」

 これのどこが馳走だと? 馳走って辞書引いてみろ! そしてご馳走様って強要される言葉なんですか、神様? あるいはどこぞの大学の教授様?


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