第十一章 母の携帯電話-2
「ホッー・・・・・」
ベッドに腰掛けると、深いため息が自然と漏れた。
手の平にある携帯電話の画面を複雑な表情で眺めている。
今からする行為が果たして良い結果を生む事になるのだろうか。
母のプライバシーを暴く事になる。
深く追求すればするほど、不幸になるような気がする。
(でも・・・もう、遅い・・・・)
そう、少女は見てしまったのである。
『あんっ・・・いいっ・・ああ、いいっー・・・』
男と交わりながら絶叫する母を。
しかも、その相手はあの竹内なのだった。
(どうして、あんな奴と・・・?)
今、圭子が最も嫌いで、おぞましく感じている人間である。
「嫌いっ・・大嫌い・・・」
男の顔が脳裏に浮んで、思わず首を振った。
今日は圭子にとって生涯で最悪の日だった。
電車の中で痴漢にあい、身体を弄ばれてしまったのである。
慣れない満員電車で身動きが取れなかったせいもあったが、原因は遠からず竹内にあったと少女は考えていた。
昨夜、矢島家を訪れた男に圭子は夢でうなされる程に、その毒気に当てられてしまったのである。
『んぐぅっ・・・』
唇を奪われるという忌まわしいシーンは、竹内への嫌悪感を一層増幅させる事になった。