ハイスペック美女、松下涼子-1
事務所では相変わらずモテモテの鉄平。特に既に関係を持っている夕梨花や美雪、乙葉、紗理奈は積極的に話しかけてくる。
「鉄平くん、ちょっと♪」
CEO室から手招きする夕梨花。何だと思いCEO室に入る。
「失礼します。」
鉄平は中に入ると都姫が待っていた。
「仕事中ごめんなさい。」
「いえ…」
「座って?」
「はい。」
鉄平はソファに座ると隣に夕梨花が座り都姫と対面する。
「仕事は慣れた?」
「あ、はい。夕梨花ちゃんも優しいし、美雪ちゃんとか乙葉ちゃんとかも良くしてくれるし、快適に仕事させて貰ってます。」
「そう、良かった。(みんなちゃんづけなのね。)井上君とも仲良くしてるみたいだけど。」
「彰はもう親友ですよ。何も問題ないです。」
「そう、良かった。実はちょっとね、片山さん達何人かがいつも井上君にキツく当たってたのよ、これまで。だからそれが心配で。彼がいなくなったらネットサービスに支障が出るから。」
「紗理奈ちゃんが?いい子だと思うけど…。他は誰が?」
「松下さんとか柳原さんとかかな。」
「涼子ちゃんと紀子ちゃんが?そんな風には見えないけど…」
「(松下さんと柳原さんもちゃんづけなのね…。)ほら、女って結構陰湿なトコあるから…。見えないトコでそう言う事よくするから。だから井上君を守って欲しいの。」
「CEOの依頼なら当然聞きますよ。いや、CEOに言われなくても彰は俺が守りますよ。」
「そう…(私はちゃんづけじゃないか…)じゃあお願いしてもいい?」
「私からもお願い♪」
「夕梨花ちゃんのお願いならよけい♪」
「ンフッ」
(やっぱちゃんづけか。)
早くも夕梨花と仲良くなっている鉄平にだんだん腹が立って来た。
(何で私だけちゃんづけじゃないのよ!他は年上だろうが年下だろうがちゃんづけのくせして!)
その気持ちがつい顔に出てしまう。
「ん?どうかしましたか?CEO?」
「えっ…?い、いえ、何でもない。ねぇ神谷君、CEOとか堅苦しくないかなー。神谷君以外、誰も私の事CEOって呼ばないから。」
「あ、そうなんですね。じゃあこれから東原さんでいいですか?」
「(そ、そうじゃなくてー!!)あ、う、うん…」
さすがに都姫ちゃんと呼んでとは言えなかった。
「じ、じゃあ井上君の事、頼んだわね?」
「はい、分かりました、東原さん!」
そう言って夕梨花と共に出て行った鉄平。1人になった都姫は自分のデスクに座り1人でイラついていた。
「何で私だけちゃんづけじゃないのよっ!もう32歳でオバサンだから!?オバサンにだってちゃんづけしてもいいじゃないのよっ!もう!」
そう言って机をバンと叩いた瞬間、急に我に帰る。
「私、脅されてる男にちゃんづけで呼ばれて嬉しいの…?何を考えてんだろ、私…」
鉄平のスマホには自分の、人には見せられない写真や動画が収められている。それをネタに色々と好きにされている自分の立場を思い出すのであった。