続・風祭〜reunion〜-13
微かな水音と共に小谷の唇が離れていく時、三重子はゆっくりと目を開き、
内心の名残惜しさを表情に浮かべながら眼前の小谷を見つめた。
「・・・・・・・」
「・・・・・三重子さん」
「・・・・・小谷さん?」
ここで三重子は小谷の瞳の中に彼女を求める“強い意思”を明確に読み取った。
「三重子さん・・・・・・」
「・・・・ここでは・・・・こんな明るいところでは・・・・」
「何故・・・・・・?」
「こんな年増なんか・・・・貴方の目に晒すのが・・・・恥ずかしいんです」
「貴女は綺麗だ・・・恥ずかしいことなんかない・・・・いや、寧ろ誇ってもいい・・・・」
小谷の言葉が三重子の羞恥心を逆に呼び起こし、
思わず三重子は小谷の視線を外すかのように俯いてしまう。
かつて元夫の佐和木も結婚直後に同じような表現で三重子の身体を賞賛し、三重子も彼の情熱的な愛撫に夢中になったこともあった。
今はあの時よりも年齢を重ねており、
自分の身体に関する自信は減じているといわざるを得ない。
しかも相手が小谷であるなら尚更だった。
そんな三重子を小谷は再び自らの胸元に引き寄せる。
「分かりました・・・・・」
「え・・・・・・」
「明かりを消していれば、いいんですね・・・・?」
思わず顔を上げた三重子に小谷は優しく微笑みかけると、次の瞬間三重子の身体はふわりと宙に浮き、
小谷の両腕で横抱きの格好にされていた。
目の前の小谷の首に両腕を回したのを合図に、小谷はゆっくりと腰を上げる。
三重子の身体の重みに微動としない男の逞しさに思わず息を飲んだ。
「お願い小谷さん、シャワーを」
「そんなの必要ありませんよ。貴女のありのままを知りたい・・・・」
居間を離れ小谷にあてがったゲストルームに向かう途中の三重子の哀願も、小谷は微笑みながらも受け流す。
既に三重子の中には諦めと共に小谷に全てを与えたいという思いが高まっており、
これ以降自分の身体が部屋の中に運び込まれるまで、ただ無言で小谷に身を委ねていた。
窓の外では雲がほとんど見えず星空が広がる中、夕方以上に強い風が吹き荒れ、山荘の建物を軋ませ揺らし、窓ガラスはガタガタと悲鳴をあげている――――――――――