その淵を這い出す。-3
始まってもいないものに思い煩うな。
そうまだ始まってない。
ゴングは鳴っていない。
力を振り絞って昇る。
朝日を見て昔泣いたことを思い出した。
その力強さに。
始まりの美しさに。
もう少し。
もう少しで光が。
手を伸ばせば届く。
最大限に腕を突き出し、
確かに握り締めた。
何を握り締めたかって?
それは
生きているという事を。
始まりの場所を。
地上に出るまで呼吸を忘れていた。
思いっきり空気を吸い込む。
咳き込む。
意味もなく涙。
生きているんだ。
しっかりと確かに。
今は微かな光だけど。
愛していけそうだ。
これからを。