第八章 公園の風景(画像付)-1
第二部 香奈子 34歳
第八章 公園の風景
「はい・・・そうです・・・すみません・・・
急に気分が悪くなって・・・・」
途切れ途切れに話す圭子の声は力なく、携帯電話を持つ手も心なしか震えている。
「家には、今から帰ります・・・
はい・・・明日は、大丈夫だと・・・」
電話が切れると、背中をベンチにもたれさせた。
「フッー・・・・」
圭子は大きく息を吐いた。
幼子の無邪気な声がそれに重なる。
平日の公園は人影も少なく、何組かの母子が砂場で遊んでいるだけだった。
圭子はベンチに座ったまま、ボンヤリと眺めている。
学校に連絡すると、担任の教師は心配そうな声で気遣ってくれた。
欠席する場合は普通、保護者から連絡しなければならないのだが、圭子は普段から模範生なので、あっさりと承諾された。
本当に気分が悪いのだから、後ろめたく思う事もないのだが、まさか自分が痴漢にあったなどとは口が裂けてもいえなかった。
最初は母から学校へ連絡してもらおうと、家に電話したのだが出かけているようで留守番電話になっていた。
録音するのも億劫な気がしてそのまま発信を切った。