第五章 匂い-2
ドクン。
その時、血が逆流するように脈打った。
苦しさがピークに達した瞬間、何かが身体の中で弾けたような気がしたのだ。
「ああっ・・・」
苦痛に歪む少女の唇から切ない声が漏れる。
同時にジーンとした快感が身体を駆けぬけていった。
(な、何・・・この・・変な感じ・・・)
圭子はその違和感に戸惑いながらも、ある事に気付き始めていた。
(ああ・・・この・・匂い・・・)
首筋に生暖かい息がかかっている。
生臭いすえたような匂いだった。
そして何よりもタバコのヤニ臭さが強烈に混じっている。
「ああっ・・・」
圭子は全身の力が抜ける程の衝撃を感じた。
(そ、そんな・・・?)
得体の知れない感覚がジワジワと沸き上がってくる。
それが懐かしく思える程、妖しく少女を誘うのだった。
(だ、だめぇ・・・)
圭子は再び現れようとするイメージを必死になって打ち消そうとしていた。
「うっ・・・くっ・・・」
唇が粘つき、何かを予感している。
(いやっ・・・い・・や・・・)
理性が拒否するのにも関わらす、その感触が鮮明になっていく。