第四章 満員電車(画像付)-2
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『うっ・・うぐぐぅ・・・』
タバコ臭い味が痺れるようにまとわりついていた。
振り払おうとしても、どうする事も出来なかった。
『フフフ・・・』
男の目が笑っている。
おぞましさに少女の瞳は大きく開いていた。
『おほぉ・・おんん・・・』
強引に入ってきた舌が圭子の口の中で暴れまわる。
『んぐっ・・・んっ・・・』
苦しさで吐きそうになる。
(い、いやぁ・・・)
両目から溢れた涙が頬を伝い、流れていく。
男の口がそれをすくい、圭子の舌に絡ませてくる。
新たに加わった味が奇妙な感覚を浮かび上がらせる。
男の唇の柔らかさを今更のように意識し始めていた。
『むぅ・・ぐぅ・・・』
頑なに閉じようとしていた唇から力が抜け、相手の侵入を許し始めている。
むず痒い興奮が少女を包む。
(いやっ・・・こ、こんな・・・)
思いに反して、夢の中で圭子は変わっていく。
まるで自分を裏切るように。
長い睫毛が両目を覆う。
うっすらと閉じた眼差しはウットリとした表情に見える。
『ん・・・ふぅ・・ん・・・』
自らも求めるように舌を絡めていったのだ。
あんなに嫌だった生臭い味が、別なものに思えてくる。
(ああ・・・だ・・め・・・)
感情が止められない。
(キスが・・・ああ・・・)
溢れ出した欲望が少女を渦の中に飲み込もうとしていた。
不条理な事にその感覚は余りにも甘美に思えたのだ。