第三章 キスの味(画像付)-4
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『い、いやぁ・・・』
しかし、昨夜の夢は最悪であった。
目覚めた時、圭子は汗をビッショリかいていた。
『はぁっ・・はぁっ・・・』
荒い息を吐く少女の細い肩が小刻みに震え、目は虚ろに宙をさ迷っていた。
『いやっ・・いやぁ・・・』
おぞましさを振り払うように何度も首を振った。
それでも悪夢はしつように脳裏にこびりつき、圭子から生気を奪っていた。
最近の寝不足のせいもあったが、今朝の顔色の悪さにはそういう訳があったのだ。
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「いやっ・・大嫌いっ・・・」
今も駅に向かう途中で、愛おしい少年の面影を押しのけるおぞましい男のイメージに対して少女は嫌悪感一杯の言葉を投げた。
(ひどいっ・・ひどいよぉ・・・)
涙ぐんだ瞳は怒りの色に染まっている。
不条理というには余りにも悲惨な夢だった。
(どうして、あんな奴に・・・)
いくら夢とはいえ、信じられない事だ。
自分が許せない圭子だった。
「ごめんね、マモル君・・・」
か細い呟きは駅の人ごみの中で消えてしまう。
まるで自分の未来を暗示するかのようで、少女の胸に不安が広がっていくのだった。