闇よ美しく舞へ。 3 『呪い』-6
少年は言った。
「悪魔ぁ……ははん、悪魔だの神様だのそんなファンタジーに興味はないね。まあもし本当に神様が居るとしたら、僕にこの力を与えてくれた事を感謝してやるよ。もっともそれは悪魔だったのかもしれないけどね」
「……愚かな」
「それより僕も驚いたよ、君の様に泣きも喚きもしない子が居るなんてね。つまらないからもう…… 死んでよ」
そう言いながら男子生徒は、念力のようなもので捕まえていた美闇の身体を、校舎5階の屋上から、勢い良く地上目掛けて、地面へと叩きつけたのだった。
”ドサンッ”と鈍い音と共に校舎脇の植え込みに人影が落ちてくると、その勢いでもって植え込みの『つつじ』も、土といっしょに宙に舞い上がる。
そして地面にめり込んだかのようにして横たわる少年の姿が、一人……。
「ば……かな…… なんで……ぼくなんだ……」
それがその、不思議な男子生徒の最後の言葉だった。
そんな男子生徒の姿を屋上のフェンス越に見詰めていた美闇であったが、なにやら封書のような物を懐から取り出すと、それをフェンスの下に置き、男子生徒が落とした物だろう、彼の上履きを拾い、そっとそれを封書の上に乗せた。
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「ねえねえ知ってるぅ。C組の『境矢(さかいや)』くん。受験勉強のし過ぎでノイローゼだたったんだって!」
「それで遺書を残して屋上から飛び降り自殺っ!」
「真面目で良い人だったんでしょ。可哀想……」
じばらくそんな噂で学内は持ちきりだった。だがしかし、時が経つにつれ、彼のことを覚えている人間は、誰も居なくなった。