オッサンが大変な事になるきさらぎ駅-1
飲みすぎてしまった。
アナウンスが無いが、電車が止まっているので終着駅なのだろう。
困った。俺の住む所は終着駅から10駅は先だ。
タクシーを使うにも、そんな長距離じゃすぐにゲロってしまいそうだ。
そのくらい、動けない。
「お客さん、起きてくださいー」
申し訳ないが、無理だ。話す余裕も無い。
揺すらないでくれ。俺は電車を汚す迷惑なオッサンになりたくない。
「あれ、もしかして起きれないー?住人じゃない人なのー?」
駅員の口調が変わった。タメ口だ。
俺が寝ているのをいい事に無礼な。
なんて言える立場ではない。
それに『住人』てなんだ。
「しょうがないなぁ…じゃあ失礼して。」
駅員は俺の体にベタベタ触る。
定期でも探してるのか?ポケットやら太ももやらをやたら触ってくる。
そしてなにやらカチャカチャやっている。
突然の腹の開放感。
え?と思っていると、股間がスース―して、次に急に生暖かいものに包まれた。
え、これ、まさか…
俺は恐る恐る薄目で下を見る。
まさかだった。
駅員が、俺の股間に顔を埋めていた。
「何をしてるんだ!」
そう言ったはずだが呂律が回らない。
動くと一瞬で頭がガンガンするが、必死の思いで抵抗する。
しかし駅員は痛いくらいに俺の上半身を押さえつけてくる。
怖い。それに、この駅員、おかしい。
何日も剃っていないような白い無精髭を生やした、生気の無い熟年男なのだ。そんな奴がいる筈はない。
変化は俺の方にも起こった。
怖いはずなのに、何故か気持ち良くなってきたのだ。
ねっとりしたストロークは往復の度に長くなっている。俺は勃起しているのだ。
駅員の男は涼しい顔で俺のちんぽを咥え、玉や太ももを丁寧に絶妙にさすってくる。
もうダメだ。抵抗する気が遠のいていく。
「イキそう…」
そう口走ると駅員の頭の動きは早くなった。
早いが、その口の中は丁寧に舌が絡まってくる。
正直、男かなんてどうでも良くなるくらい、今までで一番上手いフェラチオだ。
「あああ!イック!!」
自分でも驚くくらいの叫び声で俺は射精した。
駅員は更に俺の快感が引き伸ばされるような柔らかな動きに変わり、そして出し切ったものを全て飲んでいた。
俺は、無意識に駅員の頬を撫で、僅かに腰を上下させてしまった。
もう少し咥えていて欲しいとすら思った。
駅員はチュポン、と俺のチンポを吐き出すと顔を上げ、先程感じた恐れを忘れるくらい穏やかな笑みを浮かべ、言った。
「気持ち良くなった?」
「…ああ…」
「なら、帰れるよ。」
その後ろに、ホーム看板が見えた。
き、さ、ら、その次を読もうとした時に急に意識が途絶えた。
「お客さんー、終点なんですけどー」
パッチリと目が覚めた。目の前では駅員が迷惑そうな顔でこちらを見ていた。
先程の奴とは違う、若い駅員だ。
「すいません…」
「歩けます?」
「えーと、あ、大丈夫です歩けます。」
何故か酔いもすっかり覚めていた。
俺は駅員にトイレに行く時間はあるか尋ねた上で、個室に向かった。
ズボンを下げると、案の定、パンツがザーメンでヌルヌルになっていた。
この歳になって電車で夢精か…しかも男にされる夢で…
一人気恥ずかしい気持ちになっていると、チンポの裏筋に白い毛が何本かくっついているのに気がついた。
それは直毛で、明らかに陰毛以外の何かだった。
きさらぎ駅の話には、迷い込んだ主人公を元の世界に戻してくれる人物が存在する。
創作話のはずのきさらぎ駅に、俺は迷い込んだというのか。
もしそうだとしても、こんな話は絶対に人に話す事はできない。