魔物戦記(真実のかたき)〜紡いではいけない命〜-1
駅に着いた合図に蒸気機関の音が鳴り響く
「ったく、こんなデカイ音でも起きないってどんだけ図太いんだよ」
ノウェは亜美の耳に口を近付け、大きく息を吸う
「起きろぉー!」
「うわぁ!」
驚いて身を退いたところを見事に窓の淵がキープしていた
「っつー・・・耳元で叫ばないでよ!」
「蒸気の音が聞こえないから耳が遠いのかと思ってさ」
亜美の悲劇が面白いのか、ノウェは腹を抱えて笑っている
「眠ってたの!」
「じゃぁ図太いんだな」
あぁ言ったらこう言う
ノウェの笑いはさらに大きくなる
そして、まわりの乗客にも笑われていることに気付く
「バカ!」
亜美は顔を赤くして機関車を降りていった
「そんなに怒んなくてもいいじゃんよ」
「微笑ましいことですねぇ頑張ってください」
「はぁ」
紳士に言われ心なく答えてみるが何を頑張ればいいのか解らなかった。しかし座席を見てすぐに気付いた
「・・・あの野郎」
正確には野郎ではないが、座席には荷物がどっさりと置いてあった
「早くしないと汽車が発車するよ!」
駅のホームでにこやかに手を振っている
「テメェ・・・あとで覚えとけよ」
「あら、何のことかしら?」
そう言って亜美は歩いていってしまう
「クソ・・・血も涙もねぇ奴だ」
亜美は高級ホテルの受け付けをすませた
そして不適な笑みでノウェを見る