第十一章 不可思議なパフォーマンス-1
第十一章 不可思議なパフォーマンス
僕が得意げに案内した、プールのデッキチェアに由美は腰を下ろした。
7年たって、更に身長を伸ばした僕に未だに戸惑いの表情を見せる。
「水着、とっても似合う・・・綺麗だよ」
10年前からは想像もつかないセリフを、僕は投げかけた。
山田の受け売りではないけれど、女の子を、由美を喜ばせるセリフはいつも意識していた。
大学入学と同時に交際を再開させた二人は無事、去年、ゴールインした。
大好きだった大きな女子は、可愛い笑顔で僕を見つめてくれている。
二人、忙しい仕事の合間を縫って、今、プールでデートしているところだ。
ひとしきり泳いだ後、僕はバックから包みと封筒を取り出した。
いたずらな目で見つめると、由美に向かってそれらを差し出した。
「んっ・・・・!」
そのイントネーションに、懐かしい気持ちがジワッと胸に沸き上がった。
「な、なに・・・・?」
戸惑う妻に包みと封筒を押し付けると、僕は走り出した。
「ええっ・・・・?」
デジャブのように記憶が蘇る。
妻の声があの頃と同じように背中越し聞こえた。
やがて僕はプールの端の飛び込み用の台をよじ登り、大きく両腕を振った。
そして、丸い水たまりに飛び込んでいった。
両足はガニ又で、お世辞にも綺麗なフォームではない。
パーンと不自然な音がし、飲み込んだ水にせき込みながらヨロヨロと僕は妻の元に戻っていく。
お腹から胸にかけて、真っ赤になっている。
水に打ち付けたのだろう。
僕はヒリヒリした感触を抱きながら、妻に向かった引きつった笑顔を見せた。