第十章 待ち合わせ2-1
第十章 待ち合わせ2
中学を卒業して3年目。
僕は由美が待つ場所まで、向かっていた。
一昨年、一時帰国した由美と再会し、変わらぬ愛を確かめた。
遠く離れ離れになったけど、手紙はずっと出し合っていた。
今のように便利なメールが無かった分、愛情は深まり、育ってくれたようだ。
その証拠に、2年ぶりのキスの味は格別だったから。
別れを告げたあの日。
泣きじゃくる僕に由美から、唇を重ねてくれた。
鼻水が混じった僕の涙の味はしょっぱく、由美にとって流行歌のようなレモン味ではなかったけど。
凄く、凄く・・・嬉しかった・・・らしい。
僕も同じだったから。
とても短い時間だったけど、触れ合っていた感触は僕には永遠に思えたのだ。
だから、2年ぶりの、涙の無いキスはとても・・・。
その余韻を頼りに、僕達は2年を過ごすことができたのだ。
そして今、僕達は再会する。
彼女の父の任期切れを待たず、由美は大学入試を節目にして帰国した。
空港に迎えてくれる筈の僕を待ちながら、待ち合わせ場所の大きな時計を眺めていた。
そろそろ来るはずと、あたりを眺めている由美。
僕が近づいていくのに、まだ気づかない。
「由美っ・・・」
僕が叫んだ。
「ええっ・・・・?」
唖然とする由美に向かって、僕は近づいていった。
「由美っ・・・」
叫びながら、由美をギュッとした。
大人びた由美。
甘い香りが鼻をくすぐる。
「き、清志・・・・」
彼女は、ためらいがちに抱きしめ返していた。
「由美と別れてから、急に背が伸びたんだ・・・」
照れくさそうに言う、僕の言葉に大きく目を開いている。
「じゃあ、何で、手紙に書かなかったの・・・?」
「驚かせたかったんだよ・・・」
「俺、ずっと背が低いの、悩んでたから・・・」
僕の言葉が終わらぬうちに、由美が唇を重ねてきた。
国際空港だと、こんな派手なパフォーマンスも許されるよね?
僕もギュッとしながら、熱い息を送った。
僕の好きな大きな女の子は
大好きな、大きな女の子のまま、帰ってきてくれた。
3年間の寂しさが。
今、スッと消えていくのが分かった。