第二章 雨の日の体育館で-2
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「やっぱ・・・いいわ・・・マーちゃん・・・」
山田は直接、呼んだこともない彼女のあだ名を、切ない表情で呟いている。
卓球部の2階フロアの手すりに三人並んで、下のフロアを眺めている。
まだ15歳になったか、ならないかなのだが。
殆ど、オッサン状態だ。
特に、山田は。
「山田・・・どうして、ここにいるの?」
赤石が聞いた。
中学生にしては背が高く、180pはあるだろう。
150pちょっとの僕からしたら、羨ましくて仕方がない。
「えっ・・・?」
とぼける声を出す、山田。
本当に、コイツの考えていることは僕には想像もつかない。
同じ歳なのに、いつも突拍子もつかないことを言いだす。
バスケ部のキャプテン。
成績も優秀。
顔も、そこそこ。
女子にもモテる・・・かな?
本人は何故か、不器用で。
いまだに彼女なし。
でも、好きな女の子はいる。
下のフロアで、バレー部の本山さん。
小さくて、可愛い。
山田好みの大きな瞳の女の子だ。
「ラブレター渡す時ってさぁ・・・」
自信満々で僕達に演説する割には、告白歴無し。
いわば、ヘタレだ。
でも、僕は山田が好きだ。
おバカでも、コイツのバカ話には頷ける面がある。
だから。
僕は、迷ってるんだ。
僕の大好きな、あの子。
吉川由美に、告白することを。
僕も手すりにもたれながら、呟いた。
「かーいー(可愛い)なぁ・・・」