第二章 水滴-1
第二章 水滴
「・・・・・」
聞こえないほどのタメ息が、私の唇から漏れた。
湯船に落ちた水滴の波紋を見つめている。
一つ、二つ・・・。
私の髪から、ゆっくりと時を刻んでいく。
「ふぅ・・・」
耳元をくすぐる息に視線を向けた。
夫の顔がそこにあった。
愛おしい裕君の顔。
その瞳は私と同じように水滴の波紋を追っているよう。
でも、焦点が合わないのか虚ろな光を散乱させている。
疲れた表情はたぶん、私と同じだから。
「ふふっ・・・」
思わず声が漏れてしまった。
裕君もつられるように笑みを浮かべる。
そして何も言わずにギュッと後ろから抱きしめてくれた。
ぬるめのお湯が心地良い。
ピッタリと合わさりながら、狭いバスタブに浸っている。