②石田三奈准教授-1
新しい仕事に追われ彼女の事を忘れ始めた頃だ。
例の「競馬AI」が優秀な結果を得て会員募集する事になった。
４人のメンバーが居酒屋で祝勝会を開く。
「柴田。的中率も回収率も最高だよ。
この実績が続けば会員が会員を呼びますます増えるだろう。
僕たちが卒業する頃には有料会員だけで食っていけるはずさ。
僕は即起業するよ。」
コダマ電機の下請けより確実に利益を得られるはずだ。
酒がすすみ若い４人の会話は必然的に下ネタに流れて行く。
メンバーの一人武田が言った。
「俺、文学部の准教授石田女史やっちゃったよ。」
「えっ、わが校のマドンナ教師じゃないか。
どうしたんだ。」
「部室に俺一人の時にノートパソコンを持って来たのさ。
『夫のパソコンなんだけど動かなくなっちゃったの。
見てくれない？』ってね。」
「それじゃ間近で会話したんだ。
俺なんか遠くから教壇の石田先生見ていい女だなぁと思うだけだよ。」
「それでいつものようにバックアップの許可をもらって預かったのさ。」
「さてはそれで例の映像を見つけたんだな。」
「そうなんだ。
隠しファイルから石田先生も知らない夫の家庭内盗撮の映像が山ほど出てきたんだ。」
「バックアップは消してないんだろ？
あの颯爽として凛とした石田女史の映像見たいよ。」
「ああ後で見せてあげるよ。
主に風呂場の更衣室と寝室のベッドが舞台設定だが凄いシーンの連続だよ。」
「それで石田先生を脅迫したんだな。」
「してないよ。
盗撮映像がある事だけ説明したんだ。
そしたら石田先生『夫はそんな事する人じゃないわ。
それにこのパソコンにそんなものなかったわよ。』って怒って帰ろうとするんだ。」
「石田三奈の右の鼠径部に大きなほくろがある事なぜ僕が知っていると思いますか？」て聞いてやったんだ。
先生真っ赤に顔を染めて「そんなところにほくろなんかないわよ。」って言いながら帰らないんだよ。
美しい顔を染めながら悔しさにゆがむ風情からは堪らない色気があふれ出ていたね。
「そんな秘部のほくろ迄言い当てられたら盗撮認めざるを得ないよな。」
「解っているくせに認めないんだよ。
若い時から男にチヤホヤされて育った弊害だな。」
「当然勉強も出来、３０歳で准教授だからエリートだよな。
早慶の駄目学生に弱みを握られるなんて彼女の人生設計にはない事だと思うよ。」
でも内心人に喋られたら困るなって思っている筈さ。
どうしていいか分からず教師らしく
「君の勘違いなんだから人に喋っちゃ駄目よ。」って俺を諭すんだ。
「このピンチを抜け出す術が分からないんだ。
順風満帆にきたエリートによくある話だよ。
まして言い訳をする事はプライドが許さないし屈服することなど有り得ない事だからね。」
「そうさ。だから俺の方から折れてやったんだ。
『わかりました。誰にも喋りません』ってね。」
ノートパソコンに隠しファイルの開け方をメモして挟んでおいたんだけどね。
そしたら翌日ディナーに誘われたんだ。
シティホテル最上階のレストランだよ。
隠しファイルを開いて事の重大さに気付いたんだろうね。