ある少年の妄想-2
この日は。
「女の子にモテる、ラブレターの渡し方」
について、語っていました。
普段の妄想を、アドリブで話しています。
「ラブレター、渡すんだよ・・・」
みんなも異性のことは関心あるのか。
口を挟まないで、聞いています。
「場所は・・・」
ニヤついて、聞いているもいます。
「体育館脇の階段下」
あるある。
頷く、赤石。
「ンッ・・・て」
「ンッ・・・?」
田中が聞き返す。
「黙って、渡すのっ・・・」
「ンッ・・・て」
「なまじ、しゃべるとボロ出るだろ?」
「なるほどぉ・・・」
奥村は、いつも僕の味方。
「だからさぁ・・・」
それに気をよくして、僕が続ける。
「渡したらさぁ・・・」
中2のくせに、タメを作ってる。
「逃げるんだよ・・・」
「逃げるぅ?」
田中が間髪入れずに突っ込む。
その陰で、中島が冷たい視線を投げてくる。
「そう・・・」
意に返さず、答える僕。
「前かがみで・・・」
「前かがみぃ?」
赤石が続く。
「ダッシュするんだ・・・」
「何で、そんなことすんの?」
これは、西島。
「バカ、恥ずかしい気持ちの演出だよ」
「何じゃ、そら?」
田中が疑わしい目つきで聞く。
「まぁ、まぁ・・・」
奥村がとりなす。
「それで?」
尋ねる西島越しに、中島の顔が見える。
「それでぇ・・・」
ひるまず、僕が続ける。
【フンフン・・・】
みんな結構、聞き耳たててます。
「こけるの」
「え・・・?」
奥村の目が丸くなる。
「こけるんだよっ」
徐々に、熱弁になっていく。
「ザザーと、ヘッドスライディング!」
得意げな僕。
【何じゃ、そらぁ?】
四人の声がそろいます。
「何で、こけるんだよ?」
「そ、そりゃあ・・・」
田中君の突っ込みに。
もったいつけて、口ごもります。
「可愛いってぇ・・・」
両手を組んで、声を裏返す。
【はぁ?】
又も、四人の大合唱。
「山田クン、面白い人ぉ、可愛いっ・・・💛」
ますます、高音で。
「・・・って」
「思うんだよ」
「彼女がぁ・・・」
【ダッセー・・・!】
と、同時に大爆笑。
男子中学生の帰り道での、おバカな会話です。
笑いこけながら。
ふと。
後ろを見ると。
中島が。
群れの後方で歩きながら。
相変わらず、ズボンの裾を気にしていました。
そして。
小さく呟いたのを、今でも覚えています。
「やっぱ、俺には無理・・・だな」
この日から。
中島のことを。
チョッと、好きになりました。