第三十一章 夕暮れの中で-1
第三十一章 夕暮れの中で
映像を止めた画面は、裕君の泣き顔をアップにしている。
「映見ぃ・・・」
同じ顔が目の前にいた。
「裕君・・・」
私は思わず、その愛おしい夫の顔を両手で抱き寄せた。
「んふっ・・・・んんふぅ・・・」
求めあうまま、唇が重なる。
「ふぅ・・んふぅ・・・」
裕君の息の匂い。
随分、遠い昔のように思える。
たった、二日なのに。
熱いキスは、コテージで別れて以来だ。
家に帰ってからは軽く触れる程度の口づけだった。
怖かったのだ。
ケダモノのように交わった饗宴が、私を変えてしまったと自覚することを。
確かに忌まわしいレイプの記憶は「上書き」できたのかもしれない。
(でも・・裕君との・・・)
愛する夫と育んできた想いも消えていたらと思うと、もの凄く怖かったのだ。