「202」-1
久し振りのあなたの部屋。約一ヶ月振りに逢ったあなたは、髪を切って少しさっぱりしていた。
暫く逢えない間、私達の関係は決して上手くいっているとは言えなかったが、きっと私はあなたの顔を見た瞬間に、逢えない間の寂しさも、辛さも、もどかしさも消えて、素直にあなたの腕の中へ飛び込んでいけるだろうと思っていた。
けれど、私を待っていたのは、あなたの愛撫でも口付けでもなく、ただ拒絶でしかなかった。もう、その腕に抱き締められる事も、その優しい瞳に顔を覗き込まれる事も無いのだろう。
―――どうして? どうして…? お願い、捨てないで…
虚しく響く私の声。
でも、本当は分かっていた。私はもうすぐこの男(ひと)を失うのだと。そして今、その時が来たのだ。私はたった今この部屋で、かつてあなたと愛し合ったこの部屋で、完全にひとりぼっちだった。
あなたと愛し合った日々。私はこの部屋であなたと戯れながら、あなたの顔が近付く度に、あなたの唇がすぐ目の前に、少しあごを突き出せば私のそれと触れてしまいそうな程近くに迫る度に、恥じらいがちに目を伏せ、視線を逸らした。するとあなたが、私の頬をつつきながら、
―――なに照れてんの?
と、嬉しそうにからかってくる。
やがて口数も減り、日が沈んで部屋の中が段々と薄暗くなり始め、静寂の中にTVの音だけが無意味に響いた。私の背中に回されたあなたの腕に徐々に力が込められる。私は、眼前に迫ったあなたの唇に、我慢しきれずそっと口付けた。すると、その「合図」を待っていたかの様に、あなたの唇が貪る如く私の唇を吸い始めた。最初私は、ただされるままになっていたが、次第に自分から唇を求める様になった。御互いの唾液で淫靡な水音をたてながら、唇や舌を吸い合い、舌を絡ませ、舌の先で歯の裏を舐め、時々歯がぶつかるのも厭わず、私達はその行為を続けた。
―――んっ…
思わず、私の口から吐息が漏れる。
―――…んっ…んふぅっ…あぁっ…あんっ
私は口から次々と溢れ出す嬌声を抑えきれず、恥じらいも無く甘い悲鳴を上げ続けた。気がつくと、私は床の上に押し倒されて、めくれ上がったTシャツの中にあなたの手が潜り込むのを、朦朧とした意識の中で感じていた。あなたの体の重みに胸を圧迫されて、息遣いが更に激しくなる。私は火照った体を持て余して、特に熱くなった部分をあなたのそれへと押し当てた。そこに当たるあなたの感触は既に硬くなっていて、熱を帯びているのがジーンズ越しにわかる程だった。次第に、背中に回されたあなたの手が、私の下腹部へと伸びてくる。あなたの指が、私の下着と肌との間に入り込み、やがてそれは繁みの中に潜り込んで、秘裂を這い、とうに潤みきった窪みを探り当てた。
―――やらしいなぁ…
くちゅくちゅと音をたてて粘膜をかき回しながら、嬲る様に私を見詰めるあなた。
―――お願い、言わないで…
顔を真っ赤にしてそう言いながらも、私はねだる様にして、興奮の余り膨らんでいる肉芽をあなたの指に押し付けていた。
あなたは微笑んで、私の下着を足首まで一気に下ろすと、私の脚の付け根の辺りにかがみ込んだ。そして、私の秘肉を指で左右に割り開くと、割れ目に沿ってその舌を這わせた。羞恥と快楽に頬を赤らめる私を、愉しげに上目遣いで眺めているあなた。
―――あぁあっ…ぁあんっ、はあっ…壊れちゃうっ…あっっ
あなたのすっと通った鼻梁が私の秘裂に埋まり、その舌は、とめどなく溢れる愛液をぴちゃぴちゃと音をたてながら余すところなく受け止めていた。あと少しで達する、という所で、あなたは繁みから顔を離した。その薄い唇へと、私の秘所から透明な液体が、つうっと糸を引いている。物欲しげにあなたを見詰めるが、続けてはくれない。
―――どうすればいいか、わかるよね?
意地悪くそう言うあなたに、私はもう夢中であなたのジーンズとトランクスを下ろし、硬く屹立したそれを握り締めると、口に咥えた。ちろちろと舌の先で尿道口を舐め、喉の奥深くまで咥え込んでは顔を上下に動かし、根本を手で扱き上げた。あなたの息遣いが激しくなり、私の上に覆い被さる…
この部屋にあなたと二人きり。
テーブルの上に置かれた吸い殻でいっぱいの灰皿も、ベッドの下に散乱した新聞も変わらない。愛し合っていた頃と何一つ変わらない状況が、変わってしまったあなたの気持ちを余計に際立たせていた。目の前のあなたは、涙でかすんでもう見えなかった。