ブラザー-4
だいぶ打ち解けて来た頃、鉄平は彰に言った。
「井上くん、杉本萌香ちゃんの事、好きでしょ?」
「!?」
驚いて肉を喉に詰まらせる彰。
「な、なんですか、いきなり…!」
分かりやすい反応に鉄平はケラケラ笑った。
「だってさー、商品紹介のページで社員の子らがモデルやって写ってるじゃん?それ、なんか萌香ちゃんのだけ目立ってるもん。きっと無意識についつい力入ったんじゃないの?」
「え…」
それを見抜かれてしまい焦った。確かにそうかも知れない。萌香のを作るとき、特別な感情を抱いて作っていたのは確かだからだ。
「言わないで下さいよ!?」
「言わないって!そっかー、井上君は萌香ちゃんが好きなのかー。確かに可愛らしいもんな。優しそうだし。」
「そうなんです。他の子に比べると優しいんです。たまに気をかけてくれるし。でもきっと鉄平さんに夢中なんだろうなって今日思いました。」
萌香が鉄平と話しているときの様子を見てそう思った。
「いや、そうでもないと思うよ?」
「えっ?」
「彼女、他の子に比べて食いつき悪かったもん。それにパソコン教えるまで、みんなはグイグイ寄ってきたけど、彼女は少し離れたトコから見てたし、俺が思うに面食いじゃないよ。」
「そ、そうなんですか?」
「多分ね。だけどパソコンを教えて上げたら急に距離を縮めたから、きっと彼女は何か尊敬出来る部分を感じた人がタイプなんだと思うよ。別な言い方すると、外見ではなく内面で人を好きになるタイプだよ。井上君にも全くチャンスがない訳じゃないよ。」
「ホントですか…!?」
「多分ね。だから今までは何となく仕事をして何となくこなしていたんだろうけど、これからは積極的にアイデアを出して仕事をした方がいいよ。そうすれば萌香ちゃんだけじゃなくて井上君を見直してくれる子、増えると思うよ。」
「そ、そうですかね…。」
「うん。でもぶっちゃけ、今まで何となく仕事してた訳じゃないでしょ?」
「えっ?」
「頭の中には色んなアイデアを溜め込んでるんじゃないの?それを表に出さないだけで。」
「…」
「そのアイデアをどんどん出して行こうよ。俺、手伝うからさ!」
「…」
彰は物凄く嬉しかった。自分をここまで理解してくれる人間がいるとは思わなかったからだ。
「鉄平さん、あなた一体何者ですか…?」
「ん?ただの女ったらしだよ!アハハ!」
彰はそんな鉄平に早くも絶大な信頼をおいた。