女らしく【番外02】『俺と彩と稲荷寿司』-1
「頼む!お願いだ!」
目の前で両手をぴったりと合わせ、マコトが言う。
「嫌だな」
短く答える。
いくらマコトの頼みでもこればかりは嫌だ。
「本当にお願い!来週なんだよ大和の誕生日!」
話によると来週は九条とかいう鬼の誕生日らしい。そこで俺に何が欲しいかそれとなく聞き出してほしいそうだ。
「他の奴に頼めばいいだろ!」
「だって、男の方が大和も本音で話せるだろうし、でも晴樹は頼りないし…
頼むよ稲荷!大和と性格が合わないのは分かるけどさぁ、オレには稲荷しかいねぇんだよぉ…」
上目遣いと少し潤んだ瞳。
くっ…可愛い……
何気に男泣かせな台詞を吐きやがる…
「聞き出してくれたら稲荷寿司作ってやるから♪お願い!お前好きだろ?」
稲荷寿司………
はっ!いかんいかん!惑わされるな俺!俺はそんなやわじゃねぇ!!
「お願いします!!」
平身低頭して拝み倒す。
短めの髪がサラサラと靡いている。
ふと、ある影がマコトに重なった…
「ああもう!仕方ない!聞き出してやるよ!」
ったく、何で敵に塩を送る真似なんかしなくちゃならねぇんだ!
マコトはその言葉に顔を輝かせ、喜びの表情を浮かべる。
「ありがとう稲荷!終わったら美味い稲荷寿司作ってやるからな!!」
ああ…分かったよ…
美味いの頼むぜ?
「任せとけって♪こう見えても料理は好きだからな!よろしく稲荷♪」
本当に嬉しそうに去っていく。
今のマコトの心は喜びで一杯なんだろう。
だが、それは自分に向けられたものじゃない…
マコトにアイツを求めちゃいけないとは分かってる…
でも…
「似てるんだよな…」
俺がアイツに出会ったのは、まだ人里にも豊かな自然が残っていた時代だ。
その頃の俺は普通の狐としての命を終え、気付いたら霊獣となり、その有り余る力に酔っていた…
気ままに里やヒトを襲い、戯れに暴れ回っていた。
そんな俺のところにある霊能力者が来た。
それが『飯綱 彩』だった。