女らしく【番外02】『俺と彩と稲荷寿司』-8
俺は思った。
この女は、彩ではない。似ているだけなのだと…
けれど、似てるからこそ惹かれたのだと…
この女を見てると胸が痛い…
あの川で…
あの山で…
あの家で…
あの彩を見ていたときの様に…
ついていくことにした。この彩に…いや、蘆屋マコトに……
もしかしたら…彩の言った新たな家族になれないかと思い……
俺はマコトが好きだ。彩に似てるから惹かれただけだと知りながらも…
けれど、彩なんじゃないかという想いも棄てきれずに……
…
……
………
「稲荷!ありがとうな♪」
マコトが見慣れた笑顔を零す。
いざこざは多少あったものの、先週何とか九条の野郎から腕時計が欲しいというのを聞き出した。
「はい!これ稲荷寿司♪手作りだぞ!」
小さな弁当箱を手渡された。
あの日がまた重なった…
「大和も腕時計を喜んでくれたし、本当にありがとうな♪」
そう言うと背を向けて去っていく。
どうやらマコトは本気で九条に惚れているらしい。
そうなるとやっぱりマコトはマコトであって、彩ではないのだろうか…
弁当箱の蓋を開ける。
あの川で嗅いだ懐かしい匂いがした…
その中の一つを摘み、口に放り込む。
甘辛い油揚げと爽やかな酢飯…
もう戻れない日々…
もう帰れない故郷…
もう会えないヒト…
再び始まった生活…
再び芽生えた想い…
再び出会えたヒト…
それらを繋ぐは、稲荷寿司。
「…畜生っ…味までそっくりじゃねえか…」
目頭が熱い…
「…うめぇな……」
続く…