女らしく【番外02】『俺と彩と稲荷寿司』-7
全てを知った。
全てを悟った。
俺は彩に封じられ…
その間に数多の太陽と月が巡り…
時代は流れ…
俺は彩のいない世界へと来てしまった…
それを信じたくなくて、彩の家があった場所に建つ館を祟った。
封じられた憎しみからではない。
こうしていれば、いつか、またいつの日か彩が俺を負かしに来てくれると思ったから…
彩に会えると思ったから…
半年が経った。
満たされぬ気持ちを抱えながら、またこの日も祟ろうとした時…
風呂場に明かりが灯っていた。
「……誰かがいる?」
旅館の客足は遠のいたはずなのに…
殺気を少しだけ放っていた。ほんの僅かな殺気…
「誰だ!?」
その殺気に客は気付いた。
その顔を見たとき、不意に心が痛んだ…
その声を聞いたとき頬を水滴が伝った…
凛とした美しい顔。
がさつな言葉遣い。
そこには、いなくなったはずの彩がいた…
彩が来てくれた…
また俺を見つけてくれた…
しかし、彩ではなかった…
その証拠に男が隣りにいる…
けれど、話がしたかった…
ただ話がしたかった…
隣りにいた男に化けて近付けた。
だが…自分を押さえ切れなかった…
あまりにも彩に似過ぎていたから。
これは後悔した…
この彩から漏れた名前は知らない男の名だった。
その場は正体がばれ、次の日、俺はそいつらと戦った。
戦いの中…昔、聞いた声がする。泣きそうなのを気取られないように皮肉を零した。
彩ではないと自分に言い聞かせ、殺すことでそれを断ち切ろうとした…
けど…やれなかった…
俺はまだ彩には勝てなかった…
結局、捕まった…札を貼られ、縛られたまま…
台詞もあの日の通りだった…