二人の新しい関係-1
牧田遥太は小夏とさっきまで交わっていたソファーに、二人横に並んで座っている。二人の格好は下着も付けないで全裸のままだった。
媚薬の効果も相まって、最初の瀬尾小夏はまるで初心な乙女のような反応であった。もっとも最後は主導権を完全に向こうに取られて、いいようにされてしまったが、遥太本人は大変満足していた。
これでお付き合いが出来ればまさに言う事無しである。が、果たしてそう上手くいくものなのかと、不安も過ぎっている。
「遥太くん、あのね‥‥」
小夏が神妙な顔で話を切り出す。
「は、はい?」
果たして鬼が出るか蛇が出るか。そんな事を考えながら遥太は小夏の方へ振り向く。
「私達、恋人じゃなくてセックスフレンド‥‥そう、セフレになろう」
彼女の口から告げられたのはまさかのセフレ宣言だった。
「ど、どうしてですか!?」
興奮して身を乗り出す遥太の前で、自身の左手を目の前にかざして落ち着かせる。
「聞いて。遥太くんは私の事を盲信的に好きなのかも知れないけど、私は貴方より一回りも歳上なの。だから貴方が私と同じ年齢になる頃にはもっと私は年齢が上になる。それは分かるでしょ?」
この時の小夏にはそこまでの意図は無かったが、かざした左手の薬指の結婚指輪が、遥太の脳内を急速に落ち着かせた。
「‥‥はい」
「私は既婚者で家庭がある。貴方だって今から別の子を好きになるかも知れない。そんな時に私を理由にして想いを諦めて欲しくないの」
諭す小夏の言葉が、遥太の心に突き刺さる。
遥太は小夏の事が好きだ。それは自分で自覚しているし、間違いない。恋人以上の関係になりたい気持ちも嘘じゃない。
けれど、その小夏の方には家庭があって人妻の既婚者だ。家庭のある既婚者と恋愛関係以上になるには、常にリスクがつきものだ。どんな事で互いが破滅の道へ陥るか分かったものではない。
ただでさえ、強姦のような手を選んだのにその上で自分の事を考えてくれている人をこれ以上遥太は困らせたくなかった。好きな人だからこそ尚更に。
「分かりました‥‥じゃあ、僕からも一つだけお願いがあります」
「何?」
「僕がずっと小夏さんの事を好きだったら、その時は改めて僕の告白を聞いて下さい」
「‥‥うん、分かったわ」
多分一生無いと思うけど。そう続けて聞こえて来そうだったが、遥太は素直にこのセフレ関係を受け入れることにした。少なくとも、今は。
それにしても、と遥太は思う。かつては友人の人妻のセフレ関係に驚いた自分が、同じように人妻とセフレ関係になるなんて。
「ミイラ取りがミイラになるってこういうことなんですかね‥‥」
無意識に遥太は呟いた。
「え?それ、どういう意味?」
遥太の言っている意味が分からず、小夏は尋ねる。
「いえ、何でもないです」
遥太は微笑んで返すと、これからの関係を想像して期待に胸を膨らませた。