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『鬼と、罪深き花畜』
【SM 官能小説】

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『鬼と、罪深き花畜』-6

「おう、ミツル。来たな。入れ」
 いつものボサボサ頭をした黒岩先生が嫌らしい笑みを浮かべて迎えてくれました。先生には綺麗な奥さんがいると聞いていたのですが、応接間に通された時には奥さんの姿はありませんでした。
「先生……今日は、ほんとに絵のモデルだけにして下さい」
 僕は最初にはっきりとそう告げたんです。
「へへっ。俺の女にされたくて来たんじゃねえのか」
 先生は僕の哀願など聞く耳を持たないというふてぶてしい態度でした。
「そ、そんな嫌らしい言い方も……嫌です」
「今日はやけに強気だな、ミツル。俺のザーメンの味が忘れられねえんじゃないのか」
「そんなことをおっしゃるなら、僕は帰ります」
 僕は思い切って、そう言いました。
「分かった。分かったから、折角の美しい顔をそんな風に歪めて、怒るな。今日は一日、俺の絵のモデルだけだ。これでいいな」
 拍子抜けするくらい簡単に黒岩先生は僕の願いを聞き入れてくれたのです。僕はホッと一息を吐いて、肩の力が抜けたような気がしていました。
「お願いします。約束ですよ」
「分かったよ。それじゃ、早速アトリエに行くとするか」
 黒岩先生は高校にも変な格好で現れることが多いのですが、今日は更に変な格好でした。いっぱしの画家を気取っているつもりなのでしょうか。肩から女性用の長襦袢のような赤い着物を羽織っていて、下はダボダボのステテコだけという格好でした。

 屋敷の母屋から一旦広い裏庭に出ました。中央に噴水池を配した洋風の整然とした庭園です。その池のほとりに目を瞠るような女性が一人たたずんでいたんです。きちんとした和服の豪奢な装いで、黒髪を結い上げている凛とした美しい女性でした。その女性の周りだけが華やかに光り輝いているような気がしたほどです。
「あれが俺の女房、志摩子だ」
 黒岩先生がボソッと呟くように言ったんです。汚らしいオヤジ臭のする黒岩先生とはまるで不釣り合いな瑞々しい奥さんの立ち姿に目が眩む思いがしました。僕のママにちょっと雰囲気が似ていたからです。
 それにしても、年齢が随分離れた夫婦でした。奥さんはどう見たって三十前後にしか見えない若い女性です。最初は先生の娘さんかと思ったくらいでした。
「あら、いらっしゃってたんですのね」
 奥さんの物腰の柔らかさにも、穏やかそうな視線のほんのりとした色香にも心がひどくときめきました。一目で、一瞬にして恋に落ちる男の人の気持ちって、こんなものなのでしょうか。マザコンだと自分でも認めている僕が生まれて初めてママ以外の女性に息苦しいほど胸をときめかせた瞬間でした。
「あ、いえ……お、お邪魔してます」
 ドキドキして、足が震えて、声も震えていました。
「確か、篠田ミツルさんとおっしゃるのね。やっぱり、とっても素敵な方ですこと」
 日本人形のような美人の奥さんから素敵だなんて言われ、僕はすっかり舞い上がったような気分になっていました。奥さんは僕が先生のモデルになるために訪ねてきたことをご存知だったみたいです。
「志摩子は、実にいい女だろ」
 先生はそんな言い方を奥さんの前で平気な顔をして言うんです。
「え、ええ。すごく綺麗な方ですね」
「へへ。綺麗か……綺麗なんてもんじゃないな。俺の専属モデルだ。俺が描くのは女の美の極致だ。爛れるような性の快楽に蕩けきった女。その白い肌から匂い立つ背徳のエロスの香り。それが俺の描きたい女の官能美の極致だ。おまえにはまだ分かるまいが」
「あ、あなた……島田さんの前で変なことをおっしゃらないで」
 先生の奥さん、志摩子さんのその時の恥じらいを含んだような妖しい表情を何と表現すればいいのでしょう。淑やかさと凛々しさが滲み出ている端正な美貌に妖しい羞恥の翳がさっと差し込んだような気がしたんです。
 そんな美しい恥じらいを見せる奥さんにますます魅せられてしまったんです。


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