投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『鬼と、罪深き花畜』
【SM 官能小説】

『鬼と、罪深き花畜』の最初へ 『鬼と、罪深き花畜』 4 『鬼と、罪深き花畜』 6 『鬼と、罪深き花畜』の最後へ

『鬼と、罪深き花畜』-5

(2)
 二日後の土曜日。黒岩先生の自宅のアトリエに来るように言われました。先生の絵のモデルになるためです。あんな非道いことをしておきながら、平然とした顔で命じてきたんです。先生のモデルになるのを拒むと、学校中にあのトイレの一件をバラすと脅されたんです。恥ずかしいことに、僕が射精してしまったのは事実です。

ママには嘘をついて朝の8時に家を出ました。まさか本当のことをママに打ち明けられるはずがありません。黒岩先生の名前を口にするだけでも、あまりにも自分が惨めで、腹立たしい思いが沸き上がってくるんです。だから友達と遊びに行くとママには嘘をついたのです。
 僕は自分でも認める正真正銘のマザコンです。ママほど魅力的で非の打ちどころの無い女性なんかこの世にいるとは思えません。凛々しい美貌だけではなく、何もかもが綺麗なんです。淑やかで落ち着いた性格もそうです。心優しくて、虫一匹殺せないような人なんです。
 恥ずかしい話ですが、僕がオナニーに耽る時に思い浮かべる女性もママだけです。AV動画の女優さんの猥らな姿をいくら眺めても僕はダメなんです。ママと比較してしまうとどんなに若くて綺麗な女性も色褪せて見えるのです。幼い赤ん坊の頃のようにママの綺麗なオッパイに吸いつくことが出来たら……そんな妄想をしながらオナニーするんです。

 鏡で自分の顔を覗き込んでいると、時々ママの顔を見ているような気分になることがあります。それくらい僕の顔はママにそっくりなんです。蜜を塗したような甘い美貌です。中央がぷっくりと盛り上がった口唇から覗く真っ白くて整った歯並びに品があって、艶めかしい風情もあるんです。
(ああっ……ママッ……素敵だよおっ)
オナニーはベッドの上ではなく、鏡の前ですることの方が多いんです。鏡に映る僕の貌がママに思えて、僕は鏡にキスします。ママとキスしているような気持ちになれるんです。きっと自分もママのようになりたいと心の底から思っているんです。

 それほど好きでならないママに嘘をついて家を出た罪悪感が僕の心にトゲのように突き刺さっていました。黒岩先生から教えられた住所は世田谷の高級住宅街のど真ん中です。
先生は親から十億円を下らないほどの遺産を相続していたらしく、教師をいつ辞めても生活に困らないんだそうです。
電車を乗り継いで行く途中でも、僕は心の中でママとの会話を空想していました。
(ミツルは悪い子になったのね……ママは悲しいわ)
 美しい三日月のような眉を寄せた悲しげなママの貌が浮かび上がっていました。
(ごめんね、ママ……だって、黒岩先生とのことは秘密なんだ。ママにも言えないことなんだ。今日は先生の自宅だし、たぶん大丈夫だと思うんだけど)
(危険な人に、近付いちゃダメッ)
(ああっ。ママ……怒らないでっ)
 僕は黒岩先生の自宅の屋敷に到着するまでずっとこんな空想に耽っていました。
 ママの言う通り、僕は悪い子です。あんな非道い目に遭ったと言うのに、どうして暴力を振う猥褻教師の言いなりになっているのか、自分でも分からないのです。
 玄関のインターフォンを鳴らす時、僕は二日前のトイレでのことをまざまざと思い出して、奇妙な胸の高鳴りに襲われていました。
(ミツル、引き返すのなら今よ……あんな狂暴な鬼のような人の色に染められては、ダメなのっ)
 ママの悲鳴のような忠告を無視して、僕は先生の家の前から逃げ出さなかったんです。


『鬼と、罪深き花畜』の最初へ 『鬼と、罪深き花畜』 4 『鬼と、罪深き花畜』 6 『鬼と、罪深き花畜』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前