『鬼と、罪深き花畜』-22
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オナニーしか知らなかった童貞の僕なのに、チンポから潮を噴き上げる快美やアナルでの壮絶な牝イキを覚えてしまったら、勉強も部活もおろそかになって当然です。
それどころか、頭の中はいつも魅惑的な女に化身することばかり考えるようになっていました。通学の路上ではこっそりとお尻をクネらせて歩くんです。風呂場ではチンポを股の間に挟み込んだ自分の裸身を鏡に映して欲情するんです。夜寝る前に二時間は必ず先生からもらった6連のビーズでオンナ穴を磨き上げるんです。ケツマンコなんて呼び方が嫌で、自分ではオンナ穴と呼んでいました。乳首の性感を高めるための慰撫も同時にするんです。なぜか左側の乳首の方が異常に感じるようになっていました。
土曜日は隔週で黒岩先生のアトリエに行くようになっていたんです。鬼のように残酷な黒岩先生の猥らな調教を受けて、めくるめく魔界に舞い上がって狂わされないとダメな快楽中毒になっていました。帰宅する頃には身体は消耗しきってクタクタで、頭の中はグチャグチャです。
そんな僕の異常にママが気付かないはずがありません。
ママは薬剤師の免許も持っていますが、祖父が築いた会社の二代目社長、調剤薬局チェーンの経営者です。いずれは僕もママの後を継ぐはずなんです。ママとパパは7年前に離婚していました。
「最近ミツルが何か隠し事をしてるの、ママが気付いてないと思ってるの?」
ママに優しくそう問い詰められ、ママが誰よりも大好きな僕は何て返事しようか悩みに悩みました。そして決心して、思い切って告げたんです。
「ママ……僕ね、ママみたいに素敵な女の人になりたくて仕方ないの」
「な、な、何を言ってるの……そんなこと……」
普段は会社の女性経営者として凛としていて、家ではこれ以上ないくらい優しくて心穏やかな理想のママです。そんなママが恐ろしいほど顔色を変えて、大きな瞳で僕の顔にじっと見入っていました。
自分の息子の倒錯した告白に驚いて、ママが絶句しても当然です。
重苦しい沈黙とママの目から溢れる涙に耐えかねて、僕はリビングから自分の部屋に逃げるようにして引き返しました。ママに僕の思いを言葉では説明しようがないと思ったんです。
そして、肩を震わせて泣き崩れているママの前に10分後に戻ったんです。
とってもオシャレな前髪を揃えたインナーメッシュのボブのウィグを被り、真紅で統一した総レースのビスチェ、Tバックショーツ、ガーターストッキングのスリーインワンの下着だけを穿いていました。まるで白人の下着モデルの少女のようだと志摩子さんから賛美される姿態です。それだけではなく、背中に回した両手首の黒革の手枷を鎖で繋いで、腕がまったく使えない格好でママの背後に立ったんです。
「ママ……こんなわたしを見てっ」
僕は全身を瘧に罹ったようにブルブル震わせながら、ママの背中に呼びかけました。自虐的な露出の快感にゾクゾクしていたんです。
「ああ、あなたまで……」
そう言って涙に濡れた目で振り返った時のママの表情は一生忘れることがないくらい悲しげで、苦しげでした。美しいママのそんな悲愴感を漂わせる瞳に映る僕は、両手を拘束されたラブドールのような愛くるしい美少女のはずなんです。
でもママの目には、おぞましい変態少年にしか映っていなかったのかもしれません。