イブ-1
―――――正確な音量と間隔でドアがノックされます。
「イブ様、お兄様がお呼びです」メイドが少しだけ扉を開けて告げました。
『イブ様』と呼ばれるときは、改まった時です。
私は服を着替えて兄の部屋へ行きました。こういうのにはうるさい人なのです。
「さて、妹よこちらへ来なさい」部屋の中央まで入ります。
薄暗い部屋には兄が椅子に座っているのがわかりました。
高価な葉巻のあまい匂いが部屋中に充満しています。
兄がグラスを上げました。私はメイドのように兄にブランデーを注ぎます。
「さがって、ひと回りしろ」手を上げて指を下向きに回します。
私の所にだけライトが当たっていました。
私はゆっくり一回転して見せます。たっぷり生地を使ったドレープのきれいなスカートがやさしく広がります。
「脱げ」
「え? なんですか」
「脱がされたいのか。脱げ」
仕方なく私はブラウスの前ボタンをはずし、それからあきらめて脱ぎます。
スカートのベルトをはずすと、滑り落ちたベージュのスカートの、円のまんなかに下着姿で立ちました。
「それもだ」
シルクのブラをはずし、パンティーを脱ぎます。片手で胸を、反対の手で下半身を隠します。
「手は横だ」 兄は手を上げて指を下向きに回します。
私は手を下ろすと、ゆっくり回りました。
「イブ、おまえは三日後に誕生日だな」
「はい」
「誕生日に、次期大臣がお前を食事に招いている」
「招待を受けろということですか」
「そうだ」兄は無表情で見ています。
我慢できずに、前を隠しました。
「食事だけですか」
「そうだよ、一度だけ付き合ってやれ。 後ろを向いてかがめ」
「そんなこと」
兄の合図でひとりの男が影から進み出ると、私の腕をつかんで半回転させます。そして腕をねじりあげると、足を開かせ、体を下向きに折り曲げさせられました。
兄は男に命じ、私のおしりを左右に開かせると、処女を確認します。
「よしいいぞ、身持ちのいい女だ」
私は服を拾いました。
「いくら家の名前があるといっても私はまだ若い、「リドル卿」と呼ばれていても、後ろ盾がないと軽んじられるのだよ。おまえがその役に立てるのだ。それにおまえだって食事をすれば、一生残る、良いものをプレゼントしてもらえるだろうよ」
下着を着け、ドレスは前に抱えたまま部屋を飛び出しました。自分の部屋に戻り、ベッドに倒れ込むとじっとします。
兄の言葉が言葉どおりだと信じようとしました。