憧れへの再会-1
夕暮れに染まる繁華街の表通り。照明のライトアップが至るところのお店で始まる中、牧田遥太は一人街中を歩いていた。
一人で繁華街へ来たのは久々だった。ここ最近は学校でも放課後でも颯人と行動することが多かったので、こうして一人で居るのは妙な新鮮味を感じていた。
今日は繁華街のデパートやら本屋、ゲームセンターに寄って時間を潰していた。本日買ったのは新刊の漫画本が大半で、買った物は既にスクールバッグの中に入れてある。
今は、買うもの買ってそろそろ家に帰ろうかと歩いているところだ。
「(家の近くにも本屋はあるけど、こっちのお店は遠い分ポイントが付くからお得なんだよね)」
お目当ての漫画を買えて上機嫌の遥太の足取りは軽い。
このままのテンションで辺りが暗くなる前には家の前まで帰りたいところである。
「‥‥ん?」
今、通りの店先や通行人らに混ざって見覚えのある人達が一瞬視界に居たような気がした。
目を凝らして見覚えのある人を捜そうと、周囲に目を配る。すると、その人達を見つける。
通りに面した洋服屋のお店のショーウィンドウの前で雑談している女性が二人。遥太は両方共に見覚えがあった。片方は野畑蘭だ。金髪のロングヘアーの女性はふんわりした白いブラウスに、黒を基調とした花柄の長い丈のスカート、白いスニーカーという格好の為か前に見た派手な赤い衣装とは180度違って、落ち着いた印象に見える。
そして、彼女と話しているもう片方の女性は――。
「(あ、あの人って‥‥!?)」
その女性は名前も知らない、ハニーブラウン系のショートカットの女性。遥太の想い人であった。
女性を視界に捉えた瞬間、遥太の鼓動が即座に高鳴る。
彼女の格好もまたボーダー柄の半袖のTシャツ、クリームイエローのパンツ、蘭が履いているのとはまた違う白いスニーカー。この間見たコーディネートとは違ってこれまた新鮮味があって魅力的だ。
しかし、それは言わば副産物のようなものだ。今、憧れの女性が自分の目に映っている。それこそが、遥太の鼓動を高鳴らせている原因だった。
「(な、何で蘭さんとあの人が‥‥?知り合いだったのか?)」
遥太は、二人が一体どういう関係性なのか予想する。
「(えっと、確か颯人の住んでるアパートの前に居たんだっけ。その時蘭さんは颯人の部屋に来てたし)」
思い出してみれば確かにあの女性は颯人のアパートの前に居た。睨みつけるように部屋を見ていた。
遥太はその点を思い出すと脳内で、ある仮説を立てた。
「(蘭さんが颯人のセフレで、その蘭さんの知り合いって事は――あの人もまさか颯人のセフレ!?)」
その仮説はとんでもないことであった。
「(そ、そんな。まさか‥‥颯人のセフレだなんて‥‥!)」
まだ当人らから聞いてもいなくて、確定すらもしていない情報なのに、憧れの女性が友人のセフレの一人だという考えに至ってショックを受ける遥太。
「(ど、どうしよう。仮に告白成功しても付き合っても、颯人のと"色々"比較されたら‥‥う、うわぁぁぁぁ!!)」
遥太は想像して、心の中で絶叫した。