別れ-1
翌日
雪の空港に 降り立った 10年ぶりの函館
あれほどまでに帰りたいと 何時も願って 思い描いていた
故郷が悲しみの中での帰郷に成ってしまった
父の部屋を 受付で尋ね 病室へ向かった
病室を夫と訊ねる 母が枕元に座り寝ている痩せた父の姿を見た
母が 真奈美を見て 立ち上がり 近寄って来た
「お母さん 私の主人」 真奈美は隆を紹介した
「初めまして 真奈美の母です」 母が隆に頭を下げて来た
「お父さん 貴方の事何時も気にしてた 貴方に言った事
凄く後悔してたと 思うわ 時々貴方の写真出して
眺めていたわ 何時も貴方の事話すと
知らんって言いながら 再婚したと 話したとき 喜んでいたのよ」
母は父を見ながら 話している時 父が起きて来た
「お父さん」 真奈美はベッドの足元から声を掛けた
「・・・ま・な・み・か・・・??・・」 父が起き上がって来た
母が慌てて父の傍に駆け寄り 体を支えて行く
「お父さん・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
涙が溢れ 言葉が出せなく成って居た 父の手が上がるのを見て
父の枕元に跪き 痩せた手を握り絞める 父の手が重なって来た
「・・ご・め・ん・な・さ・い・・」 手を握り真奈美は父を見つめていた
「・・・・・・・・・・・・・・・・」 父は真奈美を見つめ頷いていた
「再婚したんだってな ご主人か?」 隆を見ながら父が真奈美に
訊ねて来た
「隆・・・夫・で・す・」 真奈美は泣きながら夫を紹介した
「・・・・・・・・・・・・」 父は何度も頷いていた
「・・今 幸せか?・・」 荒い息に変わり出した中で真奈美を
見ながら 父が聞いて来た
「・・幸せだよ 私を大事にしてくれてる・・」 父を見ながら
真奈美は答えた
「・・・・・・・・・・・・・」 笑顔に成り父は頷いていた
「・そうか・よ・か・っ・た・・・よ・か・っ・た・・よ・か・・っ・・」
頷きながら父は体を横にして眠り始めていた
「・・お父さん・・」 真奈美の呼びかけに父の返事は帰って来なかった
家族に見守られ 父はその夜眠る様に 安らかに息を引き取って行った
「有難う」 母が真奈美の手を握りながら 言って来た
「貴方に言った事 あの人後悔していたわ」 母が話始めた
「何時も 気にかけて居たの 私が話すと 知らんって言いながら」
「貴方が 再婚したと 話したときも 嬉しそうだったけど 知らんって」
「お父さんがね 貴方の名を呼んでたの 病室で寝ながらね」
「私 電話しようか 迷ってたのよ あの人貴方に逢いたかったのね」
「ずっと 貴方を待っていたのね・・・」
「真奈美を気にかけて・・ずーっと待ってたのよね」 母が言い重ねた
「幸せそうな 顔でしょ 有難う 有難う・・・ありがとう・・・」
泣きながら母は 真奈美の手を握り絞めていた・・・・・・・
真奈美は 父を見ながら 心の中で語りかけていた
・・お父さん有難う 育ててくれて・・・
・・ごめんなさい・良い娘で無くて・・・・
・・お父さん有難う ゆっくり休んでね・・・・・
・・・・・おとうさん・・・・・・・