『僕っていけない女の子?』-16
(5)
美魔女と院長の矯正治療は、凄い効果を発揮した感じだ。
僕の脳は、半分くらいは女の子の身体に戸惑っている男の脳で、残りはすっかり女の脳に戻ったみたいだった。宮内薫のスリムな身体と目映いような美貌に違和感を覚えることがなくなっていた。
それでも、僕はまだ依然として男だった。幻のオチンチンも生やしたまま残っていた。
翌朝、看護婦から折角伸び始めていた髪の毛とあそこの毛をツルツルに剃られて、綺麗な丸坊主にされたのは女の子としてちょっと悲しかった。
午後になって、久しぶりに小野田卓也が見舞いに来てくれた。
僕の過去の記憶の断片が一瞬だったけど蘇ったあの光景を思い出して、ドキドキしながらイケメン君の真面目ぶった生白い顔を眺めていた。
「カオルうっ。俺のこと、少しは思い出してくれたかい?」
僕の記憶が戻っていることを期待して、おずおずと訊ねてくる卓也が可愛かった。
「僕はまだ君のことを何も思い出せないんだ……ごめんな」
本当は少しだけ思い出したことがあったのに、僕はわざと卓也に意地悪をしてやった。笑いが込み上げてくるのを我慢するのが大変だ。
「そ、そうなんだ……カオルは覚えてないだろうけど、ほんとに、俺たち、一年以上も愛し合ってたんだよ」
卓也は肩を落とし、無念そうな貌をして僕の手を握りしめてきた。
「ふうん。愛し合ってたって言うのなら、僕のオシッコが飲める?」
僕は冗談のつもりで、とんでもないことを口にしていた。
「ええっ……カオルうっ。ど、どういうこと?」
卓也は目を白黒させて、咽喉を鳴らして僕の顔をじっと見詰めてきた。そして嬉しそうにニコッと微笑んだ。
「ええっ。卓也って……ほ、ほんとに、飲んだことがあるの?」
冗談で言ったつもりだったのに、卓也の反応に僕の方が驚いてしまった。
「何言ってんの……毎週のように、あたしに飲ませてくれたじゃない。ご聖水も潮も」
卓也は顔を真っ赤にして僕に泣きすがるような目を向けてきた。自然に女言葉になっていたみたいだ。
「や、やだぁ。やっぱり、そんな変態だったんだ」
「ううっ。カオルはあたしのこと、少しは覚えてくれてたんじゃない」
卓也は歓喜の声を挙げて、僕の手の平に口唇を押し当てていた。その貌も仕草もまるで女の子以上に女の子らしい愛らしさだ。
「た、卓也は、ほんとに女の子になりたいんだ?」
二人の関係がどんなに淫らで爛れたものだったのか、過去のすべてを知るのが恐ろしい気がした。それに、宮内薫は女の子同士みたいな卓也とのプレイに満足していたんだろうかって疑問に思ってしまう。
「カオルしか分かってくれないけど……あたし、Mの女の子になりたいって、ずっと思って生きてきたの。カオルに出会えて、どんなに幸せだったか」
卓也はすっかり安心しきった態度で、僕に恥ずかしい秘密を曝け出していた。
薫がサドな女王様みたいに振る舞い、卓也は薫に服従するマゾな牝犬だったらしい。
「僕みたいな女の子が相手なのに……卓也はそれでも良かったの?」
「だ、だって……あたしは綺麗な女の子に憧れてるんだから、カオルみたいなすっごく可愛い女の子に責められたいの。汚らわしい男なんて大嫌いっ」
卓也の性的な嗜好が十分に理解出来た訳じゃないけど、ようやく女になろうとしていた僕の脳が微妙な倒錯を覚えて、昂奮していた。幻のオチンチンが勃起していた。
「僕が今穿いてるパンティを卓也に渡したら、ここでオナニー出来る?」
「えっ、ここで?」
「そうよ。看護婦がいつ入ってくるか分からないけど」
「そ、それ、カオルの命令?」
「そう。僕が言ったことなら、何だってするんでしょ」