友人の家にて-6
アパートの二階に続く年季の入った階段を上がり、コンクリートの足場を踏みしめながら歩いて一番右側の颯人の部屋の前まで着くと、遥太はドアノブを捻って中へと入る。
「すいません遅くなりまし――」
開口一番謝罪から玄関へと戻って来た遥太だったが、
――あっ、あっ、あんっ‥
「えっ‥‥?」
部屋の奥から聞こえてくるのは女性の喘ぎ声に立ち止まる。一瞬聞き間違えだと思って耳の穴をかっぽじってから再度確認する。
――あっ、あっ、あぁんっ‥
やはり聞こえてくるのは女性の喘ぎ声であった。
「(というか、この声って‥‥もしかして蘭さん!?)」
出掛ける前まで部屋に居た女性は蘭だけなので、それ以外に推測する相手はいない。
ならばその相手は?そこまで考えれば、予想できる目ぼしい相手はこの部屋の主しか居ない。
ある程度の確信染みた予想をしながら遥太は、いつの間にか口内に溜まっていた生唾をゴクリと飲み込むと、音を立てないように玄関で靴を脱いだ。
靴を脱いでからはそろりそろりと、静かに音を立てぬように歩いて声のする部屋へと踏み込んだ。
その瞬間、遥太は目に映った光景に度肝を抜かれる。
先程見た、部屋に敷かれた白いシーツの敷き布団。そこの上には颯人らしき男性が寝転んでいる。ただし、その格好は全裸で、色黒の素肌に映える逞しい体を見せつけている。
その上では蘭が同じ様に一糸まとわぬ全裸の格好で彼の上で跨っていた。当然、ただ跨っているだけでなく、彼の胸元に手を置いてその上で腰を振っている。
二人が着ていた衣類は布団の側の畳に落ちていた。颯人の方は制服類と無地のTシャツ、トランクス。蘭の方は持って来たハンドバッグ、赤いスーツとタイトスカート‥‥。そして、着ていた下着の薔薇の刺繍の紅いブラとショーツの一式。
「あぁんっ、あんっ、あんっ、あぁっ!」
蘭は腰を上下に振りながら喘いでいる。やはり、先程から聞こえて来たのは蘭の声だったのだ。
二人の結合部分‥‥即ち、颯人の竿が蘭の割れ目に挿入している。体位は俗に言う騎乗位というやつだ。
遥太は経験無くともしている行為を理解出来た。セックスだ。二人はセックスをしているのだ。
遥太の位置からでは蘭の二つの乳房がもろ出しだ。形はお椀型で手の平に収まる程の大きさ。それが腰が動く度に微妙に揺れる。
颯人は時折その乳房に触れては、揉みしだく。
「あっ、あんっ、あっ、やぁんっ!」
蘭は艶っぽい声を上げて、感じて喘ぐ。
遥太はそんな二人の光景をただ呆然と見ている。その間、堪えた筈の下半身が目の前で繰り広げられているセックスによって再び反応していたが、それは無意識の内で遥太はその事に気づいていない。
「あぁんっ、あんっ、あぁんっ!いぃっ、気持ちぃっ!」
蘭は快楽を求めて一心不乱に腰を上下に振る。腰の上下と共に金色の髪が乱れ動くその姿は、妖艶と表するよりさながら獣のようだ。
それにしても――。と、遥太は思う。
これだけ腰を振っているのに颯人の方は無反応に近い。本当は寝ているんじゃないのか、と遥太は錯覚しそうだった。
確信して起きていると思えるのは胸を揉んでいる事、それと勃起して貫いているであろうイチモツの存在他ならなかった。
そして、結合部分を凝視していて気づいた事だが、蘭の女性器の周囲に陰毛は全く無かった。カミソリで剃ったのか、元々そういう体質なのかは分からないがパイパン状態であった。
「あっ、あっ、あぁっ、んっ、あぁっ!」
遥太は喘ぎ声で、視線が蘭の顔へと戻る。
「あぁんっ、あぁっ、!私っ、イキそう‥‥!」
蘭が腰を動かしながらもそう颯人に告げると、彼女は更に腰を振る速度を上げる。
「あっ、あっ、あっ!あぁんっ!来るっ、来ちゃうっ!私、イッちゃうっ!」
段々と腰を振る速度が一定化して絶頂の、その時が近づく。
「あ、あぁっ!イッ、イクゥゥーー!」
言葉と共にそれまで腰の動きが止まり、蘭の体はビクンビクンと痙攣した。彼女は絶頂の瞬間を迎えたのだった。
「はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥」
蘭は息を整えながら呼吸を落ち着かせると、足を広げ腰を浮して颯人の上から退く。性器による結合部分が抜けると、精液は垂れ落ちなかった。代わりに精液を受け止めていたのは、行為前に付けたと思われる膨らんだピンク色のコンドームだ。
シーンと静まるその場。その沈黙を破ったのは、
「‥‥あ、おかえり遥太」
布団から起き上がって遥太の存在に気づいた颯人の声だった。