第一章 不条理なプロローグ(画像付)-1
続「スワッピング入門」
第二部 映見、ふたたび
第一章 不条理なプロローグ
冷たい汗が滲む。
見開いた映見の瞳には、怯えの影が宿っていた。
一本道のアスファルトの先に、山が見える。
緑の背景に浮かんだ白い建物は、さっきまでいた病院だった。
友人を見舞った帰り道、久しぶりの会話を思い出しながら歩くのを楽しんでいた。
空はクッキリと晴れ渡り、気持ちの良い風が髪を揺らす。
(良かった・・・。
思ったより、元気そうだった・・・)
ホッとした気持ちを確かめたくて、帰りは駅までタクシーを使わずに歩くことにしたのだ。
東京から2時間以上もかかる郊外のK市は、平日の午後では人通りも殆どなかった。
駅の近くのメインストリートまで、爽やかな気持ちのまま、小さな旅を楽しんでいたのに。
一軒のパチンコ店の前を通り過ぎた瞬間、ゾクリとした視線を感じた。
若者二人が歩道に座り込み、ジッと映見の方を睨み付けていた。
反射的に嫌悪感に包まれた映見は、歩調を速め、駅への道を急いだ。
ヒールの乾いた音が人気の無い通りに響くと、返って、怖さが増すような気がした。
そして、振り向いた時に更なる不安が湧き上がってきたのだ。
ニヤついた顔が二つ、並んで近づいてくる。