『素直な気持ち』-1
外ではさっきから雨が降り続いている…。どしゃぶりではないが、小雨でもない雨。
はぁ〜なんでこんな日に傘持ってないんだろう。友達みんな帰っちゃったし。仕方ない、歩いて帰るか…。
高校から私の家までは歩いて30分ぐらい。晴れていたらそれほど遠い距離ではないけど、雨の中帰るには長い長い道のりに思えた。
しばらく歩くと私は髪から制服までほとんど濡れてしまっていた。
どうせ濡れるなら急いで帰っても無駄だよね。ホントにツイてないなぁ…。まだ冬服だから下が透けないだけマシか。
「加奈？」
後ろから声をかけられ、振り向くと一人の男が傘を片手に驚いた顔をしている。
「拓未？あんた何してんの？」
「それはこっちのセリフだよ！お前そんなに濡れて何やってんの!?」
「だって傘持ってないんだもん。濡れて帰るしかないじゃん…」
「バカ！風邪ひくぞお前！うちすぐ近くだから雨宿りしてけよ。」
私は拓未に連れられ、彼の家に向かった。
拓未は同じクラスの男子で、私達はいつも口ゲンカをする仲だった。口は悪い奴だけど、私はそんな彼に好意をよせていた。だから、女として見られていなくても、毎日彼と会話ができるだけで幸せだと思っていた。
「ここが俺の部屋。まぁ入れや。」
家庭の事情で一人暮らしなのは知ってたけど、家に来たのは初めてだなぁ。あたしの他に女入れたことあるのかなぁ？ちょっと緊張する…。
「おじゃましまぁす…」
意外とキレイにしてるんだな〜。あたしの部屋よりキレイかも。
「とりあえず風呂入れば？そのままだと風邪ひくし。」
「でも…。」
「何遠慮してんだよ！ほら、これ着ればいいから。制服はちゃんとかけとけよ！」
「ありがとう。じゃぁお風呂借りるね。」
拓未に優しくされるとなんか調子狂うな…。さっさとお風呂入ってきちゃお！
お風呂から上がって、彼が渡してくれたＴシャツとジャージを身に付けた。
ブラも濡れちゃった…。着けなくてもいっか。なんかドキドキしちゃう…。拓未ってこんなに体おっきかったんだ。服ブカブカだぁ。
「おっ上がったか？ココア嫌いじゃないだろ？飲めよ。」
「ありがと…」
なんか今日の拓未やけに優しくない？いつもみたいにしてくれないとどうしていいかわかんなくなるよ…。
「お前さぁ、一応女なんだから濡れて帰ったりすんなよ〜。」
「一応って何よ！失礼な！」
「心配してんだろ！可愛くねーなぁ」
「可愛くなくて悪かったわね！」
「そんなんじゃ一生彼氏できねーぞ！」
「そんなのあんたに関係ないじゃん。」
はぁ〜、あたしってなんでこんな素直じゃないんだろ…。ホント可愛くないや。でもいつもの拓未でよかった。あたしの気持ち知られたら、もうこんな風に話すこともできないかもしれないしね…。
「あんたは彼女作んないの？」
拓未はあたしが言うのもアレだけど、イイ男だと思う。背も高い方で、目や鼻、口とかのパーツの一つ一つがはっきりした顔立ちである。バスケ部に所属しているのもあって、男らしい体つきだと思う。
「言い寄ってくる女はいっぱいいるけど、俺にも選ぶ権利があるからな〜。」
「うわぁ、ひどい言い方。今の言葉みんなに聞かせたいわ。」
きっと可愛くて素直で、スタイルがいい子とかを選ぶんだろうなぁ…。あたしなんて選択肢にも入れないよね。分かってたことだけど、落ち込んできちゃった…。
「お前は選ぶ以前にその性格だと、好きになってくれる奴なんて現れねーよな！」
「いちいちうるさいなぁ！あたしは好きな人に振り向いてもらえるだけでいいですよぉだ。」
拓未に振り向いてもらえなきゃ意味ないもんね。それが無理だから悩んでるんだけどさぁ…。
私がそう言って彼から目を反らすと、いきなり彼の顔が私に近付いてきた。
「お前好きな奴いるのか!?」
えっ？何いきなり。こんなに真剣な拓未見たことない…。
「あたしだって好きな人の一人や二人いるよ！一人だけど…」
びっくりしたぁ。ドキドキしてきちゃった。
「誰だよ？お前に好かれるなんてそいつも可哀想だな(笑)」
なんだ、いつもの拓未だ。さっきの真剣な顔はなんだったんだろ？好きな人が拓未ってことはバレてないみたいね。
「誰があんたに言うのよ！あんたも理想が高すぎるからいつまでたっても彼女できないんじゃないの？」
「だってやっぱ付き合うならナイスバディで可愛い子っしょ！」
ニヤニヤと笑って彼が答えた。
やっぱり…。あたし胸はDあるけど、お腹はプニプニだもんなぁ。こんなの見せられないよ。