恋愛宣言-2
「春嬉、後ろぉぉう…」
顔を真っ赤にした亜美が呻く。
―後ろ?
後ろを見ると、見知らぬ爽やかボーイが、開けるところはすべて開いて立ちすくんでいた。目ん玉落ちそう…。このボーイはたぶん一年生?
「なんか用?」
「あ、いや…はいっ!」
その男の子が、びくんっと跳ねた。
何を血迷ったか復活した亜美は、その子を押し退けてあたしの前に仁王立ちになった。
ちょいと亜美さん?男の子、吹っ飛ばされてびっくりしてるよ?
「春嬉!何であたしが吹き出したと思ってんの!この爽やかボーイが」
びっしぃと、おどおどしている男の子を指差す。
「あんたに告ったの、たった今!!」
亜美の隣で、こくこくと高速で首を縦に振り続ける男の子。
いやいや、待て待て。整理しなきゃ…。
んとぉ、ここは食堂で公共の場で…。そんで、あたしが音を遮断してる間に見たことも話したことも無いこの子があたしに…告った…ここで…。って、ぇええぇぇぇーっっ!!??
「春嬉さんっ!自分、春嬉さんに惚れてるっす!真面目に付き合って下さいっ!!」
そう言って勢いよく、90℃のお辞儀をしているのは亜美。再現VTRはこれで五回目だ。その度に亜美は、腹を抱えてげらげら笑う。そしてあたしの隣では、あの爽やかボーイが赤くなった顔を両手で隠して「キャーッ、やぁめぇてぇ」と悶えていた。って、おいっ。
「そんなこと言ってたんかいっ」
悶えるボーイの短髪頭をバシッと叩く。
「はいっ、自分春嬉さんのこと好きっすからっ!!」
純粋無垢なきらきらオメメにあたしが映っている。
はぁ…何こいつ。何でこんな変な奴に…。
今は放課後。あたしは午後二時間ある授業を保健室で過ごすことに決定。一日の授業終了チャイムが鳴ったと同時に、亜美が保健室まで迎えに来てくれた。誰もいない内に帰宅、という作戦らしい。だがしかぁーし、二人で昇降口まで行くと、あのボーイが最強スマイルで「春嬉さーんっ」と手を振っていたのだった。そして、帰るはずだったのにそのまま三人で屋上へ…。放課後の青春スポットに何が悲しくて、この三人で…うぅ…。
「ねぇ爽やかボーイ。名前教えてよ」
そういえば、名前聞いてなかった…。
「あっ、自己紹介が遅れました!」
そう言って立ち上がり、ぴしっと姿勢を正す。
「梶 広夢!ブラッドタイプはオゥ!趣味は筋トレとカラオケ!特技は野球とサッカー!身長179センチ、体重72キロ!クラスは三年四組で…」
さらっと流していた自己紹介だけど、ちょっと待て…。三年四組?
「三年?」
「はい、自分、三年四組出席番号12番です!」
にこにこ顔の変な奴が先輩!?バリバリ敬語の変な奴が…。
「先輩っ!?」
あたしと亜美の声が重なった。当の本人は、頭上にぷかぷかとハテナマークが浮かんでいる。
「作戦タァーイム」
亜美があたしに顔を寄せ、小さな声で話した。
「アタシね、広夢さんの名前聞いた瞬間、どっかで…って思ってたんだけど、今思い出した。毎回、三年のテストで学年トップの人だよ。確か野球部キャプテンもしてた筈…」
「ぇええっっ!?」
つい大声を出してしまった。
だって…。完璧人間じゃん。その完璧人間が、何でこんなバカなの!?
「うっさい、ボケ。…だぁかぁらぁ、春嬉、付き合っちゃいなよ!顔だって意外にグッドルッキングガイじゃん♪」
確かに、爽やかで優しそうで…よく見れば格好いい…。童顔だけど、背が高いとか、がっしりした肩とか、真面目そうな黒髪とか。