女らしく【13】『潜入と調査と後編』-1
白く霞みがかった朝。
まだ陽は昇りきっていない。
起きている生徒もおらず、静かに噂の靴箱へ走っていく。
手には自分の名前を書いた手紙を握り締めながら…
悪いな奏…
親友への罪悪感に苛まれながら、誰にも気付かれることは無く、靴箱へと辿り着いた。
至って普通の靴箱である。ただ一点、南京錠が付いていることを除けばだが…
僅かな隙間から手紙を入れる。コトンと軽い音が鳴った。
その時、突然隣りから腕が伸びた。
その手にも手紙が握られており、それを一瞬の内に靴箱が飲み込んでしまった。
「貴女だけに危険を押しつけるわけにはいきませんわ」
奏が涼しげな顔をして立っていた。
「バレてたか…ごめん、奏…お前を信用してないわけじゃなくて…」
「分かってますわ…」
流石にあの場所では見つかる可能性もあったので部屋へと引き返してきた。
時刻は6時。朝食まではもう少し時間がある。
「ですが、今ワタクシと貴女はパートナー。もう少し信頼して下さってもいいと思いますわ」
「ごめん…」
そう言うと奏はスッと手を差し出した。
「仲直りしましょう♪」
奏の言う通りだな…オレ達が最も重視しなくちゃなんねえのは信頼だ…
「そうだな…奏ごめんなさい…」
クスッと笑った吸血鬼の手を握る。改めてこの黒い吸血鬼の親友に悪いことをしたと思った。
「話は変わりますがあの錠をどう見ます?」
奏の顔つきが真剣なものになった。
「率直な感想だが…まだ新しかったこととあの靴箱の中には手紙が入ってなかった。いや、入ってたのかもしれないけど…コトンって音がしたから中身は少ないと思う。でも夢の話がほんとならあの中には手紙がもっと溜まっていてもいいはずだ。つまり…」
一度言葉を切り、一呼吸間を置く。
「誰かが定期的に取り出している…ってことですわよね」
奏に見せ場を盗られてしまった…
折角、探偵気分だったのに…
「その誰かを特定しましょう。幸い今日から休日ですわ。焦らず、まずは朝食を食べてからですわね」
そんな気持ちを知ってか知らずか奏は話題を打ち切った。
朝食だけはみんな揃って食べる決まりになっている。
6時半。食堂というより広間と言うべき部屋に200人以上が入っている。