女らしく【13】『潜入と調査と後編』-7
「先輩!下がって!」
定守先輩は頷き、倒れている添嗣先輩を連れて下がった。
「奏!行くぞ!」
「了解しましたわ!」
前足の爪を躱した奏が叫ぶ。
今度はオレが前に出て接近戦を仕掛ける。
悪くない連携。だが、即興のパートナーでは僅かに差が出る。
「っぁ…!」
その僅かな隙をつかれ、奏の腕が引き裂かれた。
朱色の筋が幾つも引かれ、奏が片膝を着く。
「奏っ!…くそっ!」
相手の連撃を狙う巨大な爪の前に躍り出て奏を庇う。
迫る爪に恐怖は感じなかった…
最後に思ったのは…大和の顔だった…
大和…会いたいよ…
瞼が本能に従い、閉じられた。
ガキィン…
何かと何かがぶつかった。
一つはあの巨大な爪だろう…だがしかし、もう一つは…
ゆっくりと目の前の現実を確かめる。
黒い影が白銀の刀を掲げ、爪を防いでいる。
「遅刻ですわよ…マコトのパートナー…」
奏が少し苦しげに言った。
「奏!マコト!大丈夫?」
幼い声とともに晴樹が奏とオレの元に駆け寄って来た。
「何…これ…」
続いて呆然としている夢の口から驚愕の声が静かに漏れた。
「せぇやあっ!」
目の前の影が声と共に爪を弾き、そのまま跳躍しながら腕を斬り捨てた。
「マコト立てるか?」
そこには大和が立っていた!
「大和…何で…」
「連絡と一緒に応援も頼んだんですわ」
再会を喜ぶよりも、今やるべきことは…
「マコトいけるか?」
「任せろ!」
大和と共に相手に向かう。巨体が一振りの日本刀の前に屈伏する。
奏には悪いが、やはりオレのパートナーは大和だけだ。
大和が次に何をするか、どう動くかが手にとる様に分かる。
そしてオレがどうしたらいいか分かる。