女らしく【13】『潜入と調査と後編』-6
「いるんでしょう?出てきなさい、添嗣さん!」
添嗣先輩!?
「バレてましたか…さすが生徒会長ですね」
定守先輩と同じ位色白だが、先輩よりも地味な添嗣先輩が物陰から姿を見せた。
「もうやめなさい!」
「嫌です」
定守先輩は声を荒げているが添嗣先輩は全く気にする様子はない。
「会長はいいですよね…人望も厚い…成績も優秀…私は努力しても足下にも及ばない…でも…」
添嗣先輩の口許に狂気の笑みが浮かぶ。
「私には天使様がついてる…でも…バレたら仕方ないですから死んで下さい♪」
その言葉に人型の手が伸び、先輩を襲う。
「危ない!」
扉の裏で機会を窺っていたが、事態が急を要したため飛び出して先輩を突き飛ばす。
「マコトさん!?」
間一髪、鋭く尖った腕は背後の壁を穿った。
「マコト!大丈夫ですの!」
奏が到着した。
「何…何なの…なんで邪魔するのよ!もういい…みんな私の邪魔ばっかり…」
添嗣先輩は俯きながら声を奮わせている…
「天使様、やっちゃってよ!」
怒声をあげて人型に指示をだす。
「それは天使なんかじゃねえ!悪意の塊だ!」
「うるさい!黙れ!」
先輩の顔が怒りで醜く歪む。
「やっちゃって!やって!やれ!」
そのとき暗い声が確かに聞こえた。
「オまエもう…イラ…なイ…」
バキッ!
手が鞭の様にしなり、添嗣先輩を壁に叩き付けた。
続いて姿が段々と変化していく。
それを止めるために奏が素早く駆け出し、黒傘を振り抜く。
だが金属が弾かれる音が鳴り、驚く奏を触手のような腕が襲う。
「奏!」
霊符を撃ちだし、腕に張り付けた。一瞬だけピタリと腕が止まり、奏がその間に逃げる。
「やばいな…」
完全に変化したその身体は巨大な獣…
狗であり、狐であり、狸のようでもある…
「マジもんのこっくりさんかよ…それか、本気になった詩乃だったりして…」
こんな冗談まで飛び出す程やばい状況だ…