女らしく【13】『潜入と調査と後編』-4
『ドーマン』と呼ばれる我が家の伝統的な呪詛である。
「よし…」
呪が終わるとグネグネは紙に吸収された。先程まで白一色だった紙には新たに黒い紋様が描かれている。
「呪詛返しですの?」
「そ、人を呪わば穴二つってね。さあ、お前を作り出した主人を教えてもらおうか…」
その言葉に呼応し、紙はパタパタと動き出した。
「こっちか…」
紙が指し示す方向へ奏と共に歩き出す。
階段を上がり、長い廊下を右や左に何度も曲がり、ある教室の前で動かなくなった。
「…当たり…ですわね……」
奏が低く呟いた…
「…当たっちゃった…な……」
目の前の部屋にかかるプレートには『生徒会室』と書いてある…
「オレもああは言ったけどさ、正直なところ此所には来たくはなかったよ…」
段々とこの生徒会室が悪の巣窟に見えてきた…
「あら!マコトさん♪」
振り返るまでもなく、背後に立っているのはこの部屋の主であり、容疑者でもある定守白羽生徒会長だ…
呪詛がきれたのか紙は微動だにしない。
「ふふっ♪分かってますよ…入りましょうか♪」
何を分かっているというのか…
「どうぞマコトさん♪」
「ちょっと…待って…」
先輩の手が妖しくオレの手を握り、部屋の中へと引き込む。
「ではマコト…ワタクシは帰りますわ」
ちょっと待て!?オレを一人にするのか!?パートナーじゃないのか!
「マコト…朝のことはこれで許しますわ♪」
奏の奴、朝のこと根に持ってやがった!
「ごめんなさい!!」
それでも奏は微笑みを崩さず、
「マコト、頑張ってらっしゃい♪」
と言って扉の向こうへ消えていった。
「ごめんなさいぃ…もうしませんからぁ!」
オレの声が空しく木霊した。
すでに日は落ちている。今日一日先輩に拘束され、昼飯と夕飯まで一緒に食べることになった…
「ただいま…」
「お帰りなさいマコト、何か掴めましたの?」
オレはフルフルと首を横に振った。
「先輩からは何にも…ただ生徒会室にはあの気配が残ってた…」
しかしそれも先輩に連れ出され、じっくりと調べることは出来なかった…